「こんにちは」のあいさつ代わりに、「暑いですね」と言ってしまいそうな今日この頃。強烈な日差しと高温多湿な気候に、気持ちも体もバテ気味ではないでしょうか。
でも、ちょっと待って。もしかしたらその体の不調、暑さだけが原因ではないかもしれません。今回は、意外にも「冷え」も夏の体調不良の原因の一つであることに着目。夏でも体を温める重要性に迫ります。

暑さだけでない、夏の体調不良の原因 

夏になると気になるのが暑さ対策。強い日差しとサウナのように蒸し暑い過酷な環境を少しでも過ごしやすくするために、街中でハンディファンや空調ベストなど、涼を取るためのグッズを使用する光景はもはや当たり前のものとなりました。

これほどまでに暑さが厳しいと、暑さをしのぐ方法ばかりに目が向きがちですが、最近では暑さ対策と同じくらい「夏の冷え対策」も注目されていることを知っていますか?

暑い夏に、なぜ冷える?

一歩外に出れば暑さを感じる一方で、寒さを感じたり、体が冷える要因も夏の日常生活には潜んでいます。その筆頭に立つのが、効きすぎた冷房です。

トゥーマッチな冷房

気温が上がるにつれて使用回数が増える冷房は、厳しい暑さの日にはありがたい存在です。東京都では2025年夏の4ヶ月間、水道の基本料金を無償化することで熱中症対策のためにエアコンの使用を推奨しています。冷房が熱中症予防にとって非常に重要な役割を担っていることがわかります。夏の平均気温が昔と比べて上昇した現代においては、もはや「夏はエアコンをつける方が体調管理のためにはよい」と言っても過言ではないかもしれません。

その反面、お店やオフィスでは、ガンガンに効いたクーラーに悩まされることも少なくありません。大人数が集まる場所だと低めの温度に設定されていることが多く、気軽に温度を変えることも難しいため、まるで冷蔵庫の中にいるような寒さに。

自宅でも、体感温度の違う家族がいると、自分が寒いからといって冷房の温度を上げるのを遠慮してしまうことはありませんか。そのように冷えた部屋の中に長時間いることで、体は芯から冷え切ってしまいます。

冷たい食べ物・飲み物の摂りすぎ

夏の食習慣にも体を冷やす大きな原因が存在します。暑さで食欲のない夏は、そうめんや冷やし中華、冷製スープなど冷たくてのどごしのよい食事が多くなります。また、汗をかいてのども乾くので、仕事中はアイスコーヒーや冷たいお茶、お風呂上がりはアイスやビールなどを手に取りがちに。口にしたその瞬間はありがたい冷たさですが、体に入った後は内臓を冷やす原因に。その結果、血行不良が起こり、結果的に体全体を冷やしてしまうことになります。

ましてや、冷房のきいた部屋の中で冷たいものを飲食したら、体は内からも外からもダブルで冷やされることに。夏なのに、いえ、夏だからこそ、私たちの体は夏特有の「冷え」を抱えてしまうのです。

自律神経がピンチ!

夏特有の環境や行動によって冷やされた私たちの体は、一体どうなってしまうのでしょうか。

私たちの体は、自律神経によって呼吸や体温、血圧、内臓の活動など、生命維持に必要な機能を調整されています。自律神経には役割の異なる「交感神経」「副交感神経」の2種類があり、この2つがバランスを取りながら機能しています。しかし「冷え」はこの自律神経のバランスを乱してしまうため、体に様々な不調を引き起こします。 

交感神経と冷えの関係

体が冷えると「交感神経」が活発になり、体温を外に逃がさないように血管を収縮させる司令を出します。冷房の効きすぎた部屋に長時間いると体が冷えた状態が続くため、交感神経は血管を収縮させる司令を出し続けることに。その結果、血液が手足の末端まで届かなくなることで冷えはさらに悪化してしまいます。

副交感神経と冷えの関係

体が冷えると副交感神経の働きは抑制されます。副交感神経は体をリラックスさせたり休息モードに切り替える働きを持っているので、副交感神経の働きが抑えられることで、消化機能や免疫機能に影響を及ぼすことになってしまいます。

また、気温の高い屋外と冷房の効いた屋内の大幅な温度差も、自律神経の乱れを生む原因の一つ。暑さ、寒さを感じると、その度に自律神経はオンオフを切り替え続け、オーバーワークの大ピンチ。

その結果、自律神経のバランスが乱れてしまい、食欲の低下、睡眠不足、倦怠感、など、いわゆる「夏バテ」の症状が体に現れるのです。夏バテは暑さが原因だと思われがちですが、このように実は「冷え」も大きな原因となるのです。

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夏の冷えた体をいたわる2ステップ

STEP1 まずは体を冷やしすぎない心がけを

暑い夏に体を冷やすことは決して悪いことではありませんが、冷えすぎには注意が必要です。夏バテは暑さだけでなく、体の冷えも原因となりますので、暑さ対策とともに、体を冷やしすぎない暮らし方を取り入れるようにしましょう。

いつでも、どこでも冷房対策

夏の冷房の適温は26℃〜28℃と言われています。部屋の環境によって快適な温度は異なりますので、心地よいと感じられる寒すぎない温度設定を心がけるようにしましょう。

夏のお出かけには、靴下羽織ストールなど、寒さから身を守る【自衛小物】がマストハブアイテム。公共の場やオフィスなど、環境を変えにくい場所で寒いと感じたら、サッと身につけて冷気を遮断しましょう。

また、電車や地下鉄では「弱冷房車」を選んで乗車したり、お店ではできるだけ冷房の風が直接当たらない場所を選ぶなど、ちょっとしたアクションでも冷えすぎを防ぐことができます。

冷えていない飲み物を選ぶ

冷たい飲み物は体内への吸収が早く、暑い日や運動時の熱中症対策には最適です。しかし、冷たい食べ物や飲み物は、内臓を急速に冷やし血行不良を起こす原因です。特に夏は、冷たい物をゴクゴク飲む機会が多いことが、体を冷やす大きな要因に。そこで体を冷やしすぎない新しいドリンク習慣として「冷やされていないもの」をセレクトすることをおすすめします。

例えば、コンビニでペッドボトルの水を買うときは冷蔵庫に入っているものではなく、棚に置かれている常温のもの。お酒を飲む時は、ビールや氷の浮かんだサワーではなく、常温の赤ワイン。飲み物を選ぶ基準を「冷えていない」とするだけで、簡単に体を冷やしすぎずに済みます。

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体を温める食材をプラスオン

暑い夏に冷たい食べ物を食べたくなることは自然なことです。きゅうりトマトなど、夏に旬を迎える食材に体を冷やす性質のものが多いのも、体内にこもった熱を排出してくれる大切な役割があるから。しかし、夏でも体が冷えがちな環境にいる場合は、食べ方に気をつけた方がベター。体を温める食材を組み合わせることで温と冷のバランスを取り、体の冷えすぎを緩和させましょう。

【簡単な組み合わせ例】
  • そうめん × ねぎ・しょうが
  • 冷奴 × キムチ
  • トマト × 玉ねぎドレッシング
  • きゅうり × 味噌

STEP2 さらに温活で自律神経バランスを整える 

体を冷やしすぎない習慣が身についたら、さらに一歩踏み込んで、体を温める温活にもトライしてみましょう。

最近では、暑い夏を健康的に過ごすための方法として「暑熱順化」が浸透。体を暑さに慣れさせる重要性が認知されたことにより、夏の間も体を温めることへの関心が高まっています。

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冷えたことで乱れてしまった自律神経のバランスを正常化するには、体を温めることが一番の近道。体調に注意しながら無理のない範囲で、夏の温活にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

温かい飲み物で内臓を温める

常温の飲み物に慣れてきたら、温かい飲み物も積極的に飲むようにしましょう。体の中が温まることで血液循環が促進し、臓器の代謝がよくなり、自律神経の働きが安定します。

選ぶ際は、体を温める作用がある生姜入りのお茶やスープが特におすすめです。生姜をすり下ろして紅茶に入れたり、刻んだ生姜をみそ汁やスープにちょい足しすれば、簡単に温活ドリンクのできあがり。生姜入りのフリーズドライのスープやティーバッグのお茶を活用すれば、より一層お手軽に温活が取り組めます。

お灸で血行促進

ツボを温めることで血行が促進され体温が上がるお灸は、体がじんわりと温まるので実は夏にピッタリな温活方法。不調を感じる部位や症状によってお灸を据えるツボも変わるので、自分の体と向き合うきっかけにもなります。

夏の温活におすすめなツボは「中脘(ちゅうかん)」という、おへそから指5本分上の、おへそとみぞおちの中間に位置するツボ。冷たいものを摂りすぎて内臓が冷えた時や食欲がない時はぜひお試しあれ。

また、火を使うお灸はちょっと怖い、という人や、忙しくてお灸をする時間が取れない、という人には、火を使わないタイプのお灸がぴったり。パッチのようにシールでツボに貼れて、貼ったまま動くこともできるので、夏の温活を気負わず続けられます。他にも、煙の少ないお灸やアロマの香りのお灸など様々なタイプがあるので、お気に入りのお灸を探してみては。

湯船につかって温活バスタイム

夏の入浴はシャワーで汗を流すだけになりがちですが、夏こそバスタブにゆったりとつかって体を芯から温めましょう。血のめぐりが促され、昼間の暑さによるストレスや冷房冷え、室内外の温度差によって生じた自律神経の乱れを整えてくれます。

夏におすすめの入浴方法は、38℃くらいのぬるめのお湯に10分から15分ほどゆったりとつかる入り方。さらに、ミントやハッカなどの清涼感のある香りを楽しめる入浴剤だと入浴後もさっぱり爽快。炭酸ガス配合の入浴剤を選べば、温浴効果が高まり血行が促進、冷え改善に効果的です。

夏の温活をライフスタイルに取り込んで

暑さだけでなく冷えとの付き合い方も真剣に考えなければいけない現代。熱中症対策は万全にしつつも、過度の冷房や冷たいものの摂りすぎによる体の冷えにも意識を向けることが、夏を健康的に過ごすカギとなります。

更年期の女性は、日頃から体のほてりや冷えを感じやすいため、夏の環境による体調の変化に気づきにくいこともあるでしょう。夏の冷えを放置して体調不良を起こさないように、できることから「夏の温活」を日々の暮らしに定着させてみてはいかがでしょうか。

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