体を温めて、発汗を促すことで寒さを発散し、熱や節々の痛みを伴うかぜ症状を改善します。
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体を温めて、発汗を促すことで寒さを発散し、熱や節々の痛みを伴うかぜ症状を改善します。
体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり
かぜのひきはじめでさむけが強く、熱が高いとき / かぜのひきはじめで、体の節々が痛いとき / 運転する方、受験生など薬を服用して眠くなっては困る方
麻黄湯は、体を温めて発汗を促すことで、さむけや発熱、ふしぶしが痛むかぜを改善する漢方薬です。※眠くなる成分は入っていません。
ちなみに、かぜ症状の中で、なぜ、ふしぶしまで痛くなるのでしょう?漢方医学では、寒気を引き起こすものを「寒邪」と呼びます。寒邪は体の表面から侵入し、ブルブルとした寒気を引き起こします。次第に体の表面から内側に侵入することにより、ふしぶしなどの痛みを発すると考えられています。
インフルエンザとかぜの主な違いは、その症状です。一般に「かぜ」と呼ばれている病気は、正式には「かぜ症候群」といい、その多くがウイルスの感染によって引き起こされます。原因となるウイルスは200種類以上ともいわれているため、年に何度も感染することがあります。症状は、のどの痛み、鼻みず、くしゃみ、咳などが中心で、全身症状はあまりみられません。発熱も、軽度で済むことが多いです。インフルエンザも、ウイルスの感染によって引き起こされる病気です。かぜと違って、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの全身症状が、比較的急速に現れるのが特徴です。また、のどの痛みや鼻みず、咳など、かぜと同様の症状がみられることもあります。子どもではまれに急性脳症(インフルエンザ脳症)を、高齢者や免疫力の低下している人では肺炎などを併発するなど、重症化することがあります。
同じ発熱している状態でも、「寒気がする状態」と「体に熱がこもっている状態」があります。麻黄湯は体を温めて発汗を促す効果があるため、寒気がする状態のときに服用しましょう。いま自分がどんな状態か、下記に注目してチェックしてみてください。
チェックポイント
先述の通り、麻黄湯は体を温めて汗をかくことでかぜを改善する漢方薬です。そのため、既に汗をかいている状態で服用すると必要以上に体力を消耗してしまう可能性があります。汗をかいていない状態で服用するようにしましょう。
用法・用量は商品によって異なります。各商品の用法・用量をよく読み、正しくお使いください。
また、服用の前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すべき人の特徴についても「使用上の注意」をご覧ください。
温かい飲み物を飲んだり厚着をして、体を冷やさないようにしましょう。暖かくすることで、体を温めて発汗を促す麻黄湯の効果をさらに高めます。
「葛根湯」と「麻黄湯」は、どちらもかぜの初期症状で、寒気が顕著で汗をかいていない時に用います。 「葛根湯」はかぜの初期で寒気がして、肩や首がこわばったように凝ったり、筋肉痛が生じているときに使用します。 「麻黄湯」はかぜの初期に悪寒がつよく、ふしぶしの痛みがひどい時に使用します。
漢方薬には眠くなる成分は配合されていません。
妊娠中は特別な状態にあります。妊娠中の服用に関しましては、どのような薬でも産婦人科の担当医師にご相談ください。
生後間もない3ヵ月未満の赤ちゃんは身体が未発達であり、市販薬の服用は認められていません。
■ 相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
関係部位 | 症状 |
---|---|
皮膚 | 発疹・発赤、かゆみ |
消化器 | 吐き気、食欲不振、胃部不快感 |
その他 | 発汗過多、全身脱力感 |
まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けてください。
症状の名称 | 症状 |
---|---|
偽アルドステロン症、ミオパチー | 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。 |
3.1ヶ月位(感冒の初期、鼻かぜ、頭痛に服用する場合には5~6回)服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、
医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
麻黄湯は発汗を促進させる作用があるため、汗をかいていない状態で使用してください。
また、体力の衰えている人も服用を控えてください。
麻黄湯には、麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)の4種類の生薬が配合されています。麻黄湯の生薬の組み合わせと配合量は、急性の熱の病気についてまとめられた中国の医書「傷寒論」に基づいています。
麻黄湯はかぜのひきはじめの症状によく効きます。寒気、発熱、頭痛、咳、鼻づまり、体のふしぶしの痛みがあり、汗が出ていない時に服用すると発汗を促して熱を下げたり咳や痰を出しやすくしてくれます。また感冒や鼻かぜ、気管支炎、鼻づまりの症状の改善も期待できます。
麻黄湯の服用に適しているのは、比較的体力がある方や体力が充実している方です。
漢方薬を服用する時には、症状だけでなく、その方の体質が重視されます。体質をみるものさしのひとつである「証(しょう)」は、体力が無く細く華奢な虚弱タイプから、体力が充実していてがっちりしている充実タイプまで5段階(Ⅰ:体力虚弱、Ⅱ:やや虚弱、Ⅲ:体力中等度、Ⅳ:比較的体力がある、Ⅴ:体力充実)に分けられています。
まず、ご自分がどの証のタイプか見極める必要があります。次に、服用する漢方薬がご自分の証に適合しているかが重要です。麻黄湯は身体をあたためる作用が強く発汗を促すため、「Ⅳ:比較的体力がある」と「Ⅴ:体力が充実している」証の方が最適となっています。
葛根湯も麻黄湯と同じく、かぜのひきはじめに適した漢方薬です。では、麻黄湯と葛根湯はどのような違いがあるのでしょうか。含まれる生薬や効果が期待できる症状、選ぶ時のポイントについてみていきましょう。
麻黄湯に含まれる生薬は前述の通り4種類ですが、葛根湯には7種類の生薬が含まれています。
葛根湯には、麻黄湯と共通した麻黄、甘草、桂皮の3種類に加え、葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)の4種類の生薬が含まれています。
麻黄湯 | 葛根湯 |
---|---|
麻黄、杏仁、桂皮、甘草 | 麻黄、甘草、桂皮、葛根、大棗、芍薬、生姜 |
麻黄湯と葛根湯はどちらも汗をかいていない「かぜのひきはじめ」に服用する漢方薬ですが、含まれている生薬の違いから、それぞれ得意とする症状も違います。
寒気がして震える症状があり、さらに体力がある方は麻黄湯、体力が中程度の方は葛根湯がおすすめです。かぜのひきはじめに寒気がしてガタガタと震えるのは、免疫を高めようとする自然の体の反応。体を温める漢方薬は、この体の反応を助けることになります。
麻黄湯は葛根湯と比べて含まれている麻黄と桂皮の量が多いため、体を温めるほか、発汗作用も比較的強くあらわれます。熱があるのに汗をかけずガタガタ震えて寒気がある時には、麻黄湯が適しています。ただし発汗すると消耗するため、麻黄湯は普段から体力がある方が服用できます。
同じ症状でも、体力が中程度の方は葛根湯を選びましょう。麻黄と桂皮の配合量は麻黄湯に比べて少ないですが、生姜や葛根が配合されているため、発汗作用が期待できます。
関節痛や節々の痛みには麻黄湯、首から背中へのこわばりには葛根湯がおすすめです。かぜにともない、体が痛くなることがあります。体の節々の痛みがある場合には麻黄湯が適しています。また、かぜにともない首から背中にかけてこわばりや痛みがある場合には葛根湯の方が良いでしょう。
咳や痰などの呼吸器症状には麻黄湯、のどの違和感には葛根湯がおすすめです。因みに、「これから咳になりそうだな」というような、のどの違和感や痛みの段階のときは、消炎作用のある葛根湯が良いでしょう。
水っぽい鼻水は、漢方では体の冷えが原因と考えられています。そのため麻黄湯や葛根湯で体を温めるのが効果的です。麻黄湯と葛根湯はいずれも、鼻水・鼻づまりなど、かぜのひきはじめの症状には効果があります。
麻黄湯と葛根湯の効能効果
麻黄湯 | 葛根湯 | |
---|---|---|
証(体質・体力) | 比較的体力がある~体力が充実している | 体力中等度~比較的体力がある |
効能・効果 |
寒気がして発熱頭痛があり、咳が出て体の節々が痛く、汗が出ていないものの次の症状 ・感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり |
次の症状 ・感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み |
麻黄湯を服用する時に注意することや、服用後に気を付けるべき点を紹介していきましょう。
麻黄湯は、普段から虚弱な体質の方はもちろんですが、病気で体力が衰えている時は服用してはいけません。虚弱な体質の方が服用すると、副作用があらわれるリスクが高く、またその症状が強く出ることがあるからです。また、胃腸が弱い方の場合、麻黄湯の服用によって胃部の不快感や食欲不振、悪心・嘔吐など消化器系の副作用や、消化器症状が悪化することがあるため注意が必要です。
麻黄湯をかぜや鼻かぜに対して服用する場合には、長期間の服用は避けてください。麻黄湯をかぜのひきはじめから2日程度、つまり5~6回服用しても症状が改善しない場合には、かぜ以外の病気の可能性や、かぜが長引いた時に使用する他の漢方薬に変更した方が良い場合があります。麻黄湯の服用は中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
かぜのひきはじめは、体を温めて免疫力を高める必要があります。麻黄湯は体を中から温めて発汗を促す作用があるため、効果を高めるためにも体を冷やさないことが大切です。ただし脳の温度が上がり過ぎるのは危険なので、頭だけは冷やすようにすると良いでしょう。
漢方薬は2種類以上の生薬が、さまざまな組み合わせで配合されているため、麻黄湯と同じ生薬が他の漢方薬にも配合されていることが少なくありません。そのため麻黄湯と他の漢方薬を重複して服用することで同じ生薬の過量投与となることがあります。また異なる生薬であっても、同じ作用があったり相反する作用が働くことで効果を弱めたり、効果が高くなりすぎたりする場合があるので注意が必要です。自分の判断でむやみに併用せず、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
普段から薬やサプリメントなどを使用している方は、かぜの症状で麻黄湯を併用する時には注意が必要です。特に高血圧などの循環器系の病気や甲状腺の病気、喘息などで、継続的に薬を服用している方は、麻黄や甘草の成分との飲み合わせでより疾患及び症状が悪化するリスクが高くなるからです。そのため併用中の薬やサプリメントがある方は、麻黄湯を服用する前に医師、薬剤師または登録販売者に相談するようにしましょう。
3ヵ月未満の乳児に対しては服用させてはいけません。また、1歳未満の乳児についても、医療機関への受診を優先し、やむを得ない場合にのみ服用させるようにしましょう。
妊娠中や妊娠している可能性のある方は、服用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。原則として妊娠中には発汗を促す作用のある漢方薬の服用はすすめられていませんが、服用する有益性の方がリスクを上回る場合には服用し、症状がおさまりしだい中止します。
高齢の方は、加齢にともない体の機能が低下していることが多く、麻黄湯の効能・効果が強く出ることがあります。服用前に、医師、薬剤師又は登録販売者に相談しましょう。また、高齢者に多い排尿障害のある方では、尿の出が悪くなることがあります。その場合はすぐに中止して医療機関を受診するようにしましょう。
麻黄湯に配合されている甘草による副作用として、偽アルドステロン症や低カリウム血症によるミオパチーがあります。初期症状としていずれも、手足のだるさ、つっぱり感、こわばりが起こり、脱力感やこむら返り、筋肉痛がだんだん強くなることがあります。このような症状があらわれた場合は、すぐに服用を中止して医療機関を受診してください。 また、麻黄の成分であるエフェドリンには交感神経を興奮させる作用があるため、不眠、動悸、頻脈、血圧上昇、発汗、排尿障害や胃もたれなどの胃腸障害の原因となることがあります。そのため、高齢者や心臓に持病のある方は、服用前に、医師、薬剤師又は登録販売者に相談し、このような症状があらわれたらすぐに服用を中止して医療機関を受診してください。
麻黄湯はかぜのひきはじめに服用すると、発汗を促して解熱し、咳や鼻水の症状をやわらげます。かぜは万病の元であり、かぜを長引かせないためにも、麻黄湯は備えておくべき漢方薬のひとつといえるでしょう。
漢方薬は、服用する方の体質・体力や、症状の経過にともない異なる処方を選ぶ必要があり、しっかりとその特徴を知り、ご自分にあった漢方薬を選ぶことが大切です。
小谷敦子
薬剤師免許取得後、病院薬剤師として就職。ライフステージの変化にともない、調剤薬局の薬剤師とメディカルライターとしての実績を積んできた。東洋医学専門診療科のある大学病院の門前薬局では、漢方薬の処方に対する数多くの服薬指導を経験。