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更年期の腰痛に悩まされる女性は多いです。更年期を迎えてから腰痛になった人だけでなく、以前からの腰痛が更年期になって悪化するケースもあります。
腰痛の原因や痛みの程度、痛む場所は人それぞれです。腰だけでなく手足のこわばりといった関節痛が同時に出るなど、さまざまな症状が現れます。
本記事では、更年期に起こる腰痛の原因や特徴、症状をタイプ別に解説。更年期の腰痛を和らげる対処法についても紹介します。自分でできる対策を取り、腰痛の緩和と体調の維持を目指しましょう。
※腰痛が強く感じられる場合は、さまざまな病気が潜んでいることも考えられるので、医療機関を受診することをおすすめします。
更年期に腰痛が悪化する?
更年期に腰痛が悪化する女性は少なくありません。実際には、どれくらいの女性が腰痛で困っているのでしょうか。
腰痛だけでなく、肩こり、手足の痛みを含めた痛みに関する調査となりますが、厚生労働省が行った、更年期で痛みを感じる程度別に分類した結果は以下の通りです。
症状が強い | 症状の程度は中くらい | 症状の程度は弱い | 症状が無い | |
30代 (n=402) | 53 (13.2%) | 72 (17.9%) | 91 (22.6%) | 186(46.3%) |
40代(n=1042) | 139(13.3%) | 217 (20.8%) | 280 (26.9%) | 406(39.0%) |
50代 (n=956) | 165(17.3%) | 215 (22.5%) | 263 (27.5%) | 313(32.7%) |
腰痛などの痛みを訴えている女性は、「症状の程度は弱い」~「症状が強い」までの合計で見てみると、40代で61%、50代で67.3%もいることが分かります。
「症状の程度は中くらい」〜「症状が強い」と回答した、痛みをやや強く感じている人の割合も、40代で34.2%、50代で39.7%と約4割にのぼります。
腰痛に代表される痛みは、更年期に起こるつらい症状の代表格といえるのかもしれません。
【タイプ別】更年期の「腰痛」の特徴と対策
メノテックライフでは、更年期に関する研究や生活者アンケートの結果を多角的に分析し、更年期に乱れやすい症状に注目して独自に定義した「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素のバランス状態を判定する「バランス状態チェック」を考案しました。
3軸のバランス状態を組み合わせた8タイプの中から、今の自分の状態を判定できます。
【判定】あなたの「バランスタイプ」は?
同じように思える「腰痛」でも、バランスタイプによって原因や対策が異なります。心身のバランスが乱れる原因が分かれば、バランスを整えるための方法を知ることができます。
あなたのバランス状態をチェックしてみましょう。
更年期の「腰痛」の症状・特徴・原因
腰痛の原因はさまざまで特定することは難しいといわれていますが、更年期に腰痛が起きる原因の一つは、自律神経が乱れて血流が悪くなることです。また、運動不足も腰痛の原因といわれています。
ここでは更年期の腰痛に多い症状や原因を解説します。腰痛の状態や、バランス状態チェックで出た自分のバランスタイプと照らし合わせながら確認していきましょう。
腰全体が重だるく痛い
更年期には卵巣機能の低下に伴い、女性ホルモンの分泌量が減り自律神経が乱れます。更年期のさまざまな不調は、この自律神経の乱れによって起こるのです。
バランスタイプで「湿」の状態は、体内の水分代謝が悪い状態で、腰痛でも「腰が重だるく痛む」「梅雨の時季や天候の変化により痛みが悪化する」のが特徴です。
主な原因として、血行などの巡りが悪くなることで周辺の筋肉が緊張し、腰痛や腰周辺の重だるさが発現すると考えられます。
腰痛に伴い、カラダ全体が重だるい、頭が重い、下半身の むくみ、めまい、食欲不振、胸が苦しい、軟便などが起こることもあります。
腰周辺に持続した鈍痛が続く
腰痛でも「持続した鈍痛」「カラダを冷やしたり寒い日に痛みが誘発される」といった場合は、バランスタイプの「寒」の状態かもしれません。
「夏でも温かいものが好き」「腰や手足が冷えやすい・寒がり」というのが「寒」の特徴です。慢性的に血行が悪いことで栄養がいきわたらず、痛みやこりを感じやすくなります。さらに「湿」が加わると腰痛が起こりやすくなります。
筋肉のひきつり、むくみなどの症状や、温めると楽になることが多いというのも特徴です。
一定の場所で刺すような腰の痛みが続く
腰の血液の滞り、もともとの体質や生理周期により腰痛が悪化し、いつも痛い場所は決まっていることが多いです。
血流の悪さが原因なので、夜寝ているときに痛みが増悪しやすく、軽い運動を行うことで楽になります。
バランスタイプでは、「湿」と「熱」が加わるとじんわり広がる熱感と腰痛 があり、「湿」と「寒」が加わると冷えるような痛みがあります。血行が悪くなることに加え、腰周りの筋肉が加齢によって衰えることも原因と考えられます。
腰が重く力が入らない
体質的に筋力不足や虚弱、慢性的に疲労を感じている人は、加齢によって腰痛が発現したり、悪化したりすることがあります。バランスタイプでは「虚」の状態に多く見られます。
「常に疲れやすく、気力が出ないことが多い」「食欲不振になることが多い・胃腸が弱い・お腹を壊しやすい」「爪が薄く、もろい」といった傾向が見られます。
足腰がだるい、物忘れ、耳鳴り、頻尿、白髪、難聴、精力減退、むくみなどを伴うのも特徴です。
腰や手足の痛みがある
更年期に減少する女性ホルモンのエストロゲンは、関節の動きをスムーズに促す作用があると考えられています。エストロゲンの減少により、腰や手足の関節がスムーズに動かず、痛みが出ることがあるのです。
朝目が覚めてカラダを動かそうとしたら、関節がスムーズに動かず痛みを感じることや、手の関節に違和感や痛みを覚える女性も少なくありません。
※この症状は、バランスタイプにかかわらず、発現する可能性があると考えられます。
左側・右側だけなど片側の腰だけ痛い
腰痛が左側、右側など片側にのみ集中する場合、その原因の一つとして腰や骨盤のゆがみがあります。
- カバンや重い荷物をいつも同じ側で持つ(いつも利き手で持つなど)
- 職場や家庭で、いつも同じ方向へ偏った姿勢を取る(職場環境やテレビの位置など)
- 特定の方向に向いて寝る習慣(添い寝など)
- 出産などに伴う骨盤のゆがみ
心当たりがある場合は、意識して左右の向きを変える、左右の手に均等に負荷をかける、腰や骨盤のゆがみを改善するストレッチなどの対策を行うことがおすすめです。
注意点として、腰痛が左右どちらかの場合には、内臓に関する病気の可能性があります。数週間〜1カ月ほど対策を続けても改善しない場合は、医療機関を早めに受診しましょう。
※この症状は、バランスタイプにかかわらず、発現する可能性があると考えられます。
ストレスが要因になることも
ストレスも更年期の腰痛を引き起こす要因の一つといわれています。
腰痛につながる主な原因として、ストレスによる自律神経の乱れで筋肉が緊張し腰周辺への血流が悪くなり痛みを引き起こしたり、ストレスが脳の働きに影響を及ぼし痛みを感じやすくなったりすることがあげられます。
更年期はさまざまな不調が現れますが、更年期の症状がストレスを増加させ、腰痛をひどくしてしまうという悪循環に陥ることも少なくありません。
※この症状は、バランスタイプにかかわらず、発現する可能性があると考えられます。
他の病気の可能性も
腰痛があるときに忘れず注意したいのは、他の病気や症状によって痛みが発現するケースです。「いつもの腰痛だから……」と油断せず、医療機関へ相談することも検討しましょう。
原因を特定することはできませんが、腰痛が併発することが多い病気や症状は以下の通りです。
- 筋肉系のトラブル(炎症や損傷など)
- 関節系のトラブル(炎症や損傷など)
- 椎間板ヘルニア
- 内臓の病気
- 子宮の病気
- 妊娠や出産後に起こる骨盤のゆがみ
腰痛は一般的に整形外科を受診しますが、更年期のほかの不調と合わせて婦人科で相談することも可能です。両方とも近くになければ、かかりつけの内科医でもOK。まずは医療機関で早めの相談をしましょう。
更年期の「腰痛」を改善させるための対処法
腰の痛みを和らげることにつながるツボ押しやストレッチでセルフケアを行うことも大切です。無理のない気持ちいいと感じる範囲で試してみましょう。
※腰痛が強く出ている、試してみて痛みや違和感がある、医師に止められているといった場合は無理して行わず、医師のアドバイスに従いましょう。
ツボ
腰痛に効果的なツボを3つ紹介します。これらのツボは腰痛の緩和やカラダを温めるのに役立ちます。
【三陰交(さんいんこう)】
足の内くるぶしから指4本分上の骨のきわにあり、「婦人科の要穴」といわれるほど、女性特有の不調に用いられるツボです。血流促進や冷えの改善に効果があるとされます。親指で気持ちのよい程度に押しましょう。
【八風(はっぷう)】
足の指の間にあり、親指から小指までの間に片足で4カ所のツボがあります。指の間にリンパがはりめぐらされているため、手で握手するように握り刺激すると足が温まります。
【命門(めいもん)】
おへその真裏、背中にあるツボで、冷えに有効です。この部分を温めるとカラダ全体が温まります。衣類の上からカイロを貼ることで簡単に温めることができます。
温めて腰の痛みを緩和
痛みが強い場合は、ストレッチよりも安静な状態で腰周辺の巡りをよくする対策がおすすめです。腰の痛みや状態に応じて、できることからはじめてみましょう。
- 貼るカイロ
日ごろから腰周辺を冷やさないよう工夫することが大切です。痛みがある日や寒い日は、肌着の上から貼るタイプのカイロをあてておくのが有効です。 - 腹巻やブランケット
夏場でも気がつかないうちに冷房で腰が冷え腰痛が悪化することがあります。普段から薄手の腹巻をつける、デスクワーク時には腰にブランケットを巻くなどの対策がおすすめです。 - お灸
先ほど紹介した腰のツボ「命門」に、お灸をして温熱刺激を与えるのもよいでしょう。火を使わない貼るタイプのお灸だと簡単に試せます。 - お風呂+アロマ
湯船に15分ほど浸かることでカラダの芯まで温まり、血行改善による腰痛緩和の効果が期待できます。そのとき、アロマの入浴剤などを入れるのもおすすめです。アロマの香りはリラックス効果があり、ストレス緩和による血行促進に役立ちます。
ストレッチや筋トレで腰痛予防
腰痛は加齢に伴い筋力が低下することも要因の一つです。そのため、腰痛がない(少ない)ときは無理のない範囲で、腰回りの筋肉を鍛える、ストレッチで血行をよくするといった対策が有効といえます。
ここでは腰の痛みがない(少ない)ときに試したい、腰痛予防のストレッチを紹介します。すでに痛みがある場合は無理せず、医師のアドバイスに従ってください。朝晩2回を目標に試してみましょう。
【仰向けで腰を伸ばす】
- 仰向けに大の字で寝て、腰周辺をリラックスさせる
- 両膝を胸の方に抱える
- 上記 1)の姿勢で腰が気持ちよく伸びる感覚を意識して、1~2分ほどキープする
【胸を伸ばす】
- 立った状態で背筋を伸ばし、両手を後ろで組む
- 胸を前に突き出すようにして、ゆっくりと胸やカラダ全体を伸ばす
- このとき、背中で両方の肩甲骨が中央に寄るよう意識し、腰が気持ちよく伸びるのを意識する
テニスボールを使って腰周辺の血行をよくする対策もおすすめです。腰周辺に古いテニスボールを置き、その上に仰向けで寝る状態でカラダをのせ、腰周辺を優しく刺激します。痛みがない(少ない)ときに、気持ちいいと感じる範囲内で試しましょう。
ずっと座っているなど、同じ姿勢でいるとカラダが緊張し、腰周辺の痛みやこわばりにつながります。オフィスなどでストレッチが難しい場合も、1時間に一度は、トイレや書類を取りに行く機会をつくって意識的に動くことがポイントです。
更年期の腰痛は適切なケアで痛みを悪化させないように
更年期はさまざまな原因から、腰痛が現れたり悪化したりする時期です。腰痛の痛みが出ているときの無理は禁物ですが、今の状態にあった適切なケアで腰痛を悪化させないよう対処していくことが大切です。
医療機関の受診も視野に入れつつ、まずは自分に合う対策を見つけ腰痛とうまく付き合っていきましょう。