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朝起きた時に顎がだるかったり、仕事などで集中している時にグッと歯を噛みしめていたり…無意識に、くいしばっていることはないでしょうか?
くいしばりにかかる力は、なんと食事をしているときの約3倍以上!女性だと100〜200キロの力がかかっていると言われています。
くいしばりは、虫歯・歯の欠けだけでなく、頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすことがあり、放っておくと歯の寿命を縮めたり、歯周病や知覚過敏・顎関節症になったりと、体に大きな負担を与えるので注意が必要です。
くいしばりの原因として、嚙み合わせの悪さで起こる物理的要因と、ストレスや緊張などの精神的な要因が考えられます。
また、更年期に入り体調が変化する中で、くいしばりが悪化する方も増えています。
更年期におけるくいしばりの原因と、対策について詳しく解説します。
くいしばりチェック
「歯ぎしり」や「くいしばり」はほとんどの方に自覚がなく、歯科医院やエステなどで指摘されて初めて気づくという方も多くいらっしゃいます。
まずは自分がくいしばりをしているのかチェックしてみましょう。
- 朝起きると顎が疲れている
- 仕事中など集中している・緊張しているときに食いしばる癖がある
- 舌の側面に歯型がついていることがある
- 歯にひびが入っている
- 知覚過敏がある
- 原因不明の肩こり、首の痛み、頭痛がある
- 上下の歯を見て噛む面が平らに削れている
更年期になるとくいしばりが悪化するのはなぜ?
1.エストロゲンの低下
更年期に伴いエストロゲンの分泌量の減少により、自律神経の働きが乱れやすくなります。エストロゲンは、神経系や感情の安定にも関わるので、低下すると精神的な安定が揺らぎやすくなり、ストレスが増加し、無意識に顎に力が入ることがあります。これがくいしばりの原因になることがあります。
また、エストロゲンは筋肉や神経の緊張を緩和する働きを持っています。
そのため、エストロゲンが減少すると、筋肉の緊張が起こりやすくなり、顎や顔周りの筋肉が過度に緊張すると、食いしばりの原因になることがあります。
2.仕事、家庭などのストレス
くいしばりはストレスが主な原因として考えられています。
更年期は、家庭では親の介護や子供の思春期・受験などが重なり、職場では管理職や責任のある立場に就いていることが多いため、ストレスを抱えやすい時期です。
ストレスを受けると、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは交感神経を刺激して体の緊張状態を保たせるので、顎の筋肉が緊張しやすくなります。この緊張が長期化するとくいしばりが悪化することもあります。
また、強い精神的ストレスが続くと、脳がストレスを解消するために歯を食いしばったり、歯ぎしりをすることでドーパミンやβ-エンドルフィンというストレス発散ホルモンを分泌します。
これらのホルモンは脳内モルヒネや脳内麻薬様物質とも呼ばれ、多幸性をもたらすためくいしばりがクセになりやすくなります。
3.睡眠の質の乱れ
質の良い睡眠のためには1日の規則正しい体温リズムが大切です。早朝が最も低く、次第に上がり、夜は体温が下がってスムーズに眠れるようになるのです。
更年期世代は閉経前後で女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌リズムが大きく崩れることが原因で、体温調節を担う自律神経が乱れることに加え、ホットフラッシュなども相まって入眠時の体温調整がうまく行えず睡眠の質が低下しやすくなります。
更年期におけるくいしばりの対策
1. ストレス管理をする
ストレスを軽減することが、くいしばりの対策として重要です。
嫌なことやつらいことがあった時と同様に、自分なりのストレス解消法やリラックスできる方法があると、それだけで心強いものです。
ヨガや瞑想、深呼吸などで自律神経を整えたり、趣味や運動で自分がリラックスできる時間を意識的に作りましょう。
お気に入りのアロマやお香を嗅ぐ、音楽を聴く、ハーブ入りの温かいお茶を飲む、映画や読書にふけるといった、自分が喜ぶことを積極的に取り入れましょう。
2.睡眠の質を向上させる
人は深部体温が下がるタイミングで眠くなるため、就寝の2時間ほど前に入浴するのもおすすめです。一度体温を上げることでその後体温が下がり、寝つきやすくなります。
そして、十分な睡眠を取るために、就寝前のスマホ使用を避けリラックスできる環境を整えましょう。
また、リラックス効果のあるノンカフェインのお茶を飲んだり、安眠効果のあるラベンダーの精油を入れて入浴したり、就寝前にアロマスプレーとして寝具に香りをつけるのも睡眠の質を上げるのにオススメです。
お茶は覚醒作用や利尿作用がないノンカフェインのものを選ぶことで、就寝前でも安心して飲むことができます。
寝る前にアルコールを摂取すると睡眠が浅くなり、睡眠の質が下がってしまいます。睡眠が浅いと歯ぎしりを誘発しやすくなるので注意しましょう。
3. 顎のマッサージを行う
咬筋マッサージ
左右のエラの3cmほど前方を親指以外の指で押さえて、グッと噛み込んだときに盛り上がる筋肉(咬筋)を、指で円を描くようにマッサージします。
側頭筋マッサージ
こめかみから約3cm上の部分に人差し指と中指を当てて、一度強く噛み締めます。その時に膨らむ側頭筋を、小さな円を描くようにグリグリとマッサージします。
こめかみ・顎関節の周囲をマッサージ
こめかみや顎の周りを優しく円を描くようにマッサージします。
マッサージは、血行が良くなっていて滑りも良い入浴中に行うと効果的です。
4.マウスピースの利用
歯や顎への負担を軽減するために、歯科医師に相談して自分に合ったマウスピースを作るのもおススメです。 就寝時に使用することで、くいしばりや歯ぎしりから歯を保護します。
また、定期的に歯科検診を行い、歯の健康状態をチェックし、問題があれば早めに対処しましょう。
5. 歯の接触を、必要なときだけにする
意外かもしれませんが、本来上下の歯の接触が必要なのは食事や会話のときだけで、口を閉じている状態では触れ合わず、1〜3ミリのすき間があるのが正常です。しかし無意識に口を閉じている時に、上下の歯をくっつけている癖がある方は少なくありません。これをTCH(Tooth Contacting Habit / 上下歯列接触癖)と呼びます。
上下の歯を閉じた状態だと筋肉をずっと使い続けた状態になり、長時間にわたって弱い疲れを与え続けてしまいます。さらに仕事やスマートフォンの操作・料理といった何かに集中していると、無意識にくいしばり、強い負荷がかかります。
口を閉じている時に上下の歯が触れ合っている癖がある人は、まずはその癖を自覚し、歯を離すことを意識することから始めましょう。
6. 専門家を受診する
適切な診断と治療を受けるために病院や専門医の手を借りるのも有効です。
婦人科
更年期症状全般で受診するなら「婦人科」がおすすめ。
治療法としては、ホルモン補充療法(HRT)と漢方薬が代表的です。
・ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)は、少量のエストロゲンを「経口剤(口から飲む薬)」「貼付剤(貼り薬)」「塗布剤orゲル剤(塗り薬)」のいずれかの方法で補充する治療法です。
・漢方薬
心身のバランスを整える漢方薬は、更年期のさまざまな不調に対するお薬として選ばれることが多いです。
心療内科・精神科
心がつらいなら「心療内科・精神科」でカウンセリングを受けるのもおすすめです。
内面から整えて健やかで快適な生活を
無意識で自覚症状がない「くいしばり」。まずはくいしばりチェックで自身の状態をチェックしてみましょう。症状を放置すると、歯や顎の健康だけでなく全身の不調にもつながるため、早めに対策するのがおすすめです。
更年期のくいしばりは、ストレスケアや睡眠の質がとても重要になります。まずは日常で取り入れられるところから始めて、健やかで快適な生活を送りましょう。