更年期はさまざまな体調の変化が起こります。「耳鳴り」はその中の症状の一つで、めまいや頭痛を伴うケースもあります。
耳鳴りの音が気になって仕事や家事に集中できなかったり、就寝時に耳鳴りが聞こえて熟睡できなかったりすることもあります。
本記事では更年期に起こる耳鳴りの特徴や原因を解説。つらい耳鳴りを改善するためにできる対処法として、おすすめの食べ物や栄養、ツボなどの対処法を紹介します。更年期の耳鳴りを和らげるために、さっそく見ていきましょう。
更年期に起こる耳鳴りはどんな音?主な特徴・原因
更年期に起こる耳鳴りは、キーンという高音が特徴とされています。耳鳴りだけでなく、めまいや頭痛を伴うケースなど、それぞれの主な特徴と原因を解説。独自の「バランスタイプ」ごとの特徴も紹介します。
更年期の耳鳴り|あなたの「バランス状態チェック」
メノテックライフでは、更年期に関する研究や生活者アンケートの結果を多角的に分析し、更年期に乱れやすい症状に注目して独自に定義した「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素のバランス状態を判定する「バランス状態チェック」を考案しました。
3軸のバランス状態を組み合わせた8タイプの中から、今の自分の状態を判定できます。
同じように思える「耳鳴り」やそれに関連する症状も、心身のバランスが乱れる原因によって変わります。まずは自分のバランスタイプをチェックしてみましょう。
キーンという高音が響く
更年期の耳鳴りで聞こえる音は「キーン」「サー」といった高音が一つの特徴です。
更年期に耳鳴りが起こる主な原因として考えられているのは、女性ホルモンの分泌量が低下することによる自律神経の乱れです。更年期の耳鳴りでは、聞こえ自体が悪くなることは少ないといわれていますが、耳の病気や加齢などが重なり聞こえが悪くなることもあるようです。
特に女性の場合は、片頭痛との関係に着目する必要があります。
バランス状態チェックで独自に定義している「熱」や「実」に当てはまる場合、ストレスが一因となって耳鳴りが発現することがあり、このときは、片頭痛が出たり、不安感やイライラが増したりすることが多いです。
耳鳴りは静かな環境で顕著になるため、就寝時に起こると不眠につながったり、耳鳴り自体がストレスの原因になったりすることもあります。つらい耳鳴りが続いている場合は、我慢しすぎず更年期の相談ができる婦人科などを受診しましょう。
●女性ホルモン分泌と更年期の自律神経の乱れ・不調との関係●
脳の視床下部が排卵の準備をするように指令し、下垂体から「卵巣を刺激するホルモン(卵胞刺激ホルモン・FSH/黄体形成ホルモン・LH)」が分泌される
↓
卵巣から女性ホルモンが分泌される
・排卵前:排卵準備のための女性ホルモン「エストロゲン」が分泌
・排卵後:妊娠準備のための女性ホルモン「プロゲステロン」が分泌
↓
妊娠に至らなければ生理がくる
30代後半から卵巣機能の衰えで女性ホルモンの分泌量が低下。脳の指令通りに卵巣から女性ホルモンが分泌されないことに脳が混乱し、自律神経が乱れる
↓
生理とは関係ないタイミングで、更年期のさまざまな不調が発現する
めまいが伴う
更年期の耳鳴りで多いのは、めまいを伴うケースです。めまいには主に2つの種類があります。
一つは、カラダがふわっと浮いたように感じる「浮動性のめまい」、もう一つは周囲が回転しているかのように感じる「回転性のめまい」です。
めまいと耳鳴りが同時に起こる主な理由は、更年期による自律神経の乱れが聴覚器官に影響することが考えられます(※)。また、バランス状態チェックで「湿」に当てはまる場合、体内にある水分の巡りが悪くなっていることにより、めまいだけでなく、むくみが生じることもあります。
※カラダの平衡感覚をつかさどる三半規管が聴覚器官と近い位置にあるため、聴覚器官が乱れるとその影響を受けると考えられます。
頭痛がある
これまでも少し触れていますがめまいの症状を持つ女性の中には、頭痛を持っている人が多い傾向です。若いころは頭痛がひどく、更年期になりめまいに悩むようになった女性も少なくないでしょう。
頭痛には主に「緊張型頭痛」と「片頭痛」の2種類があり、どちらもめまいとの関連性が指摘されています。
バランス状態チェックで「寒」「湿」に当てはまる場合、耳周辺の血流が悪化することで耳鳴りやそれに伴う頭痛が生じることがあります。
耳鳴りや頭痛のほかに強い倦怠感を伴う場合は、強い疲労やストレスが引き金になっていることがあります。バランス状態チェックの「虚」に見られる症状です。視力減退や物忘れ、腰痛などを伴うものは加齢が原因となることもあります。
低音・痛みがある場合は別の症状が原因かも
更年期の耳鳴りは高音であることが多いのですが、「ボー」「ブーン」といった低音の耳鳴りや耳の閉塞感、痛みを伴う場合は更年期の耳鳴りとは別の症状の可能性があります。
更年期の耳鳴りと似た症状が現れる疾患をいくつか紹介しましょう。
メニエール病
耳鳴りやめまい、耳のふわふわする感覚、吐き気を伴うことがあります。
中耳炎
耳がつまったような閉塞感、耳鳴り、聴力低下を感じることがあり、時には痛みを伴うケースも。
突発性難聴
片耳、または両耳に聴力低下、耳鳴り、耳の閉塞感を引き起こすことがあります。
放置すると聴覚に深刻な影響を及ぼす可能性があるため早めの対処が必要です。更年期による症状と、そのほかの症状との判別は難しいため、耳鳴りや耳の痛み、閉塞感がある場合は、まずは耳鼻咽喉科に相談してみましょう。
更年期の「耳鳴り」|おすすめの食べ物・栄養
更年期に起こる耳鳴りの対処法として、日々の食事の改善があげられます。難しく考える必要はなく、手のかからない方法で必要な食べ物や栄養を上手に取り込むだけでOK。さっそく試してみましょう。
耳鳴りに多いバランスタイプは「湿」「熱」
バランス状態チェックで「耳鳴り」が多く見られるのは、「湿」「熱」と考えられます。まずは、どのような傾向があるのか、それぞれの代表的な特徴を見ていきましょう。
更年期の耳鳴り:「湿」タイプ
耳鳴りは、カラダが「湿」の状態に傾いたときに多く見られる症状といえます。「湿」の状態とは、「水の巡りがよくない」「水分バランスが過剰」な状態で、耳鳴りやめまいのほかに、「手足や顔などがむくみやすい」「雨や台風の時に頭痛を感じやすい」といった特徴があります。
更年期の耳鳴り「熱」タイプ
「暑がり・汗をかきやすい」「冬でも冷たいものが好き」が思い当たる人は「熱」の状態かもしれません。熱の状態とは、体内に余計な熱がたまり「熱性傾向」に傾いた状態です。耳鳴りのほかに、イライラや不安感が強い傾向が見られます。
更年期の耳鳴り|湿タイプにおすすめの食べ物
「湿」傾向が強い場合におすすめなのが、体内の水分バランスを整え、余分な水分を排出する作用を持つ食べ物です。
また、「湿」傾向では、耳周辺の血流の悪化が耳鳴りの一因になることがあるため、血液循環を促す食べ物を摂取しましょう。
ハトムギ
体内の不要な水分を排出し、水分代謝を促します。
ハトムギは洗って10分ほど吸水させ、30分~1時間ほど煮込むとやわらかくなります。煮汁ごとスープにしたりサラダにしたりして食べましょう。小分けにして冷凍保存しておくと便利です。
重要なのは水分摂取を控えるのではなく、適切な水分を補給して余分な水分の排出を促すことです。白湯などカラダに優しい水分を摂取し、水分代謝のバランスを整えましょう。
かんきつ類
ミカンの実を包む袋(実を包んでいる薄い皮)やミカンの外側の皮(外果皮)に多く含まれる「ヘスペリジン」が、むくみ解消や血流改善に効果的といわれています。そのため、ミカンの実を食べる際は、薄い袋ごと食べましょう。ミカンの外果皮を利用したジャムもおすすめです。
青魚
青魚に含まれるDHAやEPA、魚介類に含まれる亜鉛は、血流改善や貧血予防にも効果的なため、積極的に摂りたい食べ物です。忙しいときや体調がすぐれず料理がつらいときは、無理に手の込んだ魚料理を作らなくても魚の栄養を摂取できます。
たとえば、シラスをご飯にのせる、冷ややっこや納豆にかつおぶしを加えるなど、簡単な方法でも栄養は十分に摂取できるのです。サバ缶と刻んだショウガを入れるだけの炊き込みご飯も◎。湯煎で温めるだけのパック入りの魚なども上手に活用しましょう。
シジミ・アサリ
シジミ、アサリなどの貝類や海苔などに多く含まれるビタミンB12は、血液を作り血流をよくする作用があるといわれています。神経の働きを助ける作用もあるため、傷ついた末梢神経の修復にもかかわると考えられています。
週に数回ほど、シジミやアサリのお味噌汁にしたり、副菜としてアサリの佃煮や焼き海苔などを食事のメニューにプラスするとよいでしょう。
生姜・イチョウの葉
中耳は聴覚に関わる蝸牛と平衡感覚を司る前庭や3つの半規管から成り、これらの中はリンパ液が入っています。半蝸牛の失調や規管にあたる体液のゆれる動きの影響でめまいや耳鳴りが起こります。生姜やイチョウの葉が内耳のトラブルを改善し、耳鳴りが良くなったとの報告もあります。
蝸牛はビタミンAを大量に必要とする器官で、その他にもビタミンDや鉄、亜鉛の不足も感覚と神経からくる聴力喪失や耳鳴りにつながっているといわれています。これらのビタミンやミネラルを含む食品も摂ることをおすすめします。
更年期の耳鳴り|熱タイプにおすすめの食べ物
更年期の耳鳴りやめまいなどの不調は、自律神経の乱れが主な原因です。中でも、「熱」傾向にある場合、イライラや不安感などが出やすくなるため、自律神経のバランスを整える作用がある食べ物を意識的に摂取することをおすすめします。
米油・玄米・ぬか漬け
ガンマリノレン酸を含む米油、玄米、ぬか漬けは、自律神経の安定に役立つといわれています。週の半分を玄米にしたり、市販のぬか漬けを一品加えたりするなど、簡単にはじめられることから取り入れてみましょう。
ナッツや種実類
ビタミンEが豊富なナッツや種実類には、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。ひまわり油やオリーブ油といった植物油にも同様の作用があるとされるため、手作りドレッシングにチャレンジするのもおすすめです。
ハーブティー
更年期の耳鳴りやその他の更年期の不調には、ハーブティーもおすすめです。一般的に期待できる効果とともに紹介します。
【ペパーミント】
清涼感が、イライラや不安をしずめ、気持ちの切り替えを促します。
【カモミール】
リラックス効果が高く、ストレスや緊張を和らげるのに役立ちます。
【フェンネル】
余分な水分を排除し、腸内環境を整える効果が期待できます(※)。
【セージ(シソ科)】
鎮痛作用があり、耳鳴りや頭痛によるつらさの緩和に役立つとされています。
【タンポポ茶】
タンポポの根を使ったハーブティーは利尿作用があり、体内の余分な水分の排出を促すといわれています。
なお、ハーブティーには妊娠・病中に禁止されている種類や利尿作用が強く就寝前に向かない種類もあります。飲む前に成分表や注意書きを確認しましょう。
※腸内環境と脳には強い関係性があるといわれています。腸内環境を整える作用のある食べ物を積極的に摂取しましょう。
更年期の「耳鳴り」におすすめの対策とは?
耳鳴りがつらいときに、簡単にできる対策がツボ押しです。耳の周りにあるツボを覚えておき、耳鳴りやめまいでつらいときに押してみましょう。また、耳周辺の血行をよくするために、耳を温めるという方法もあります。
ツボ
【聴宮(ちょうきゅう)】
耳の穴から指1本分顔側。口を開けたときに、へこむ辺り
【翳風(えいふう)】
耳たぶの裏側。聴宮の反対側くらいの位置にある
【完骨(かんこつ)】
耳の裏側、耳たぶの高さくらいにある出っ張った骨のすぐ下のくぼみ
※ツボ押しで耳鳴りが悪化する場合は直ちに中止し、専門の医療機関を受診しましょう。
温タオルで耳を温める
耳鳴りの緩和には、耳やその周辺の血行をよくすることも大切です。温かいタオルを耳にあて、温める方法があります。
【タオルで耳を温める手順】
- まず、ハンドタオルを水でぬらし固く絞る
- 電子レンジ(500W)で約30秒温める(レンジの機種によって時間は調整し、取り出す際には熱さに注意)
- 温めたタオルを広げ、快適な温度になるように振って冷ます。適温になったタオルで耳全体を覆うように大きくあて、リラックスする
- ①~③の順で、両耳を行う
耳鳴りは、肩や首のこりで耳への血流が悪くなることでも起こります。肩や首にも温タオルをあてて血行を促してみましょう。
※温めることで悪化する場合は直ちに中止し、医療機関を受診しましょう。
更年期の耳鳴りはバランス状態を整え上手に対処しよう
更年期は女性のカラダにさまざまな不調をもたらしますが、耳鳴りはその中の一つの症状です。
更年期に起こる耳鳴りは高音が特徴で、時にはめまいや頭痛を伴うこともあります。メニエール病や中耳炎、突発性難聴、加齢による影響も否定できないため、耳鳴りがある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
更年期による耳鳴りの症状を緩和させるには、自分のバランス状態を整えることも大切です。ここで紹介した食べ物や栄養、ツボなどの対処法を生活にうまく取り入れながら、上手に対処していきましょう。