著者 : クラシエ編集部
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「MenotechLife(メノテックライフ)」は、クラシエ編集部が発信する更年期のためのサポート・メディアです。長年の研究やアンケート結果を基に、更年期の身近でリアルな情報を発信し、みなさまが自分らしく前向きに過ごすサポートができれば嬉しいです。

今までにはなかったようなミスをした、仕事のスピードが落ちた、周囲の目が気になってくよくよしてしまう、やる気が出ない……。20代、30代で積み重ねた経験と実績で、自信とキャリアを築いてきたはずなのに、突然心と体が思うように動かなくなり戸惑っている。
それは、更年期ロスかもしれません。

40代以上の働く女性の半数が体験している「更年期ロス」

閉経を挟んだ約10年間、一般的に45~55歳頃を「更年期」と呼びます。この時期女性ホルモンのバランスが大きく変化し、様々な心身の不調が現れます。「更年期ロス」とは、更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響が生じてしまう状態を指します。

東京都産業労働局の働く女性のウェルネス向上委員会が行ったアンケート調査によると、45~49歳の47.6%、50~54歳の49.8%が、更年期症状により仕事に支障が出ていると回答しています。

更年期は多くの女性にとって避けられないライフステージです。ホルモンバランスの変化による身体的・精神的な不調には個人差がありますが、その不調が原因で仕事に支障が出ることは多くの女性に起こり得ます
しかし、職場における、更年期への理解や制度の整備は、まだまだ進んでいません。また、更年期の女性自身も、更年期症状についての知識が不足しているために、自分を責めて抱え込んでしまうことが少なくありません。その結果、キャリアを諦めたり、退職を決断する女性も多くいます。

2024年2月に経済産業省は、更年期症状による経済損失額は1.9兆円に達するというデータを発表しました。また、別の調査では「更年期離職」による損失は、男女合わせて6300億円に上るという試算もあります。更年期女性と仕事の問題は、社会全体で取り組むべき重要な課題となっています。

更年期障害の二大要因は「ストレス」と「睡眠」 

更年期に起こる心身の不調により、仕事や日常生活に影響が出る状態を更年期障害といいます。更年期障害の主な要因は、「ストレス」「睡眠の乱れ」であることがわかっています。
更年期にあたる45~55歳頃は、家庭では親の介護や子供の思春期、受験などが重なる時期であるのに加え、働いている女性は職場においても管理職や責任のある立場についていることが多いため、ストレスを抱えやすく、また忙しさから睡眠不足になりがちです。限られた人だけの問題ではなく、誰もが更年期障害になる可能性があることを自覚しておきましょう。

ストレスの影響

ストレスは自律神経のバランスを崩し、ホルモンの分泌にも影響を与えます。結果として、ホットフラッシュや不安感、うつ症状などの更年期障害が悪化することがあります

睡眠の乱れの影響

更年期には、ホルモンバランスの変化により、自律神経が乱れて睡眠の質が低下することがよくあります。また加齢により睡眠を誘導するメラトニンの分泌量が減少することも相まって、睡眠にも影響を与え、不眠や夜間の目覚めが増える原因となります。
さらに、ストレスが高まると、交感神経が活発になり、リラックスできずに眠りが浅くなることもあります。睡眠の乱れは、日中の疲労感集中力の低下を引き起こし、更年期症状をさらに悪化させる悪循環を生み出します

気がついたら睡眠不足になっていませんか?-秋の睡眠の日を機会に睡眠の質を見直しましょう-

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更年期ロスの実情とは?理解を深めることが鍵

NHKと公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会が行った調査によると、更年期障害が原因で業務に支障をきたした際、約6割の女性が「誰にも相談しなかった」と回答しています。周囲に相談できず、一人で抱え込み、結果として仕事を諦める女性も少なくありません。

更年期の女性は、管理職など責任のある立場にいることが多く、自身の体調の悩みを周囲に話しづらいと感じることがあります。また、「更年期」という言葉に対するマイナスイメージや、話すことへの恥ずかしさも一因です。

さらに、更年期障害は約100種類の多様な症状があるため、周囲の理解を得にくい傾向があります。更年期がはじまる時期にも個人差があること、また閉経して初めて、それ以前の5年間が更年期だったと明確になることもあって、本人もその不調が更年期症状であることに気付かず、自信を喪失したり、業務や人間関係に支障をきたして、最終的には離職に至ってしまうことがあります。

更年期を迎える女性は、豊富な経験と知識を持つ貴重な人材であり、更年期ロスによる離職は、企業にとっても大きな損失です。

そうならないためには、働く女性自身はもちろん、職場の上司や同僚も更年期症状についての理解を深めることが重要です。

では、具体的に、更年期ロスでどのようなことが起こっているでしょうか?実際の体験談を紹介します。

感情のコントロールができなくなる

・職場で突然泣き出したり、けんか腰になったり、自分で感情がコントロールできなくなってしまった。そんな自分に自己嫌悪に陥ってしまう。

・イライラして職場の上司や後輩とぶつかることが増え、人間関係が悪化した。

・更年期でイライラしてしまうこともつらいがそれを「ヒステリー」だと片付けられてしまうことがつらい。

更年期には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ることで、「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」が脳内で合成されづらくなり、イライラや不安を感じやすくなります。不要に自分を責めることなく、そういう時なのだと自身の状況を客観的に受け止めましょう。
意識的にゆったりと過ごして自分を労わる時間を作ったり、同じ年代の友人や、更年期を乗り越えた先輩に、話をきいてもらうのもおすすめです。

ホットフラッシュ

・商談やトラブル時の緊張した場面で突然滴り落ちるほどの大汗をかいたり、動悸がすることがある。

・エアコンが効いている会議室で、自分だけ汗びっしょりになってしまい恥ずかしい思いをした。

・職場が暑く感じられ、ほてりや発汗があるが、若い職員は手足が冷えると言っており、エアコンの設定温度を下げられない。

急激に暑さを感じたり、汗が止まらなくなるホットフラッシュは、血管の縮小や拡張をコントロールする機能を持つエストロゲンの減少と、エストロゲンの減少によって、体温調節や発汗をコントロールする自律神経が乱れることが原因です。
ホルモン補充療法でエストロゲンを補うことが症状の緩和に効果的です。婦人科を受診することも検討してみましょう。

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気力の低下

・更年期症状で集中力が低下した。業務の生産性が下がり、そんな自分に落ち込んでしまう。

・40代になった頃から強い倦怠感や眠気、頻繁な頭痛に襲われ、働く気力がわかなくなった。

・眠気、だるさ、頭痛、めまいなどの症状があり、電車で通勤することがつらい。管理職なので休むわけにもいかず、我慢している。

更年期には、精神の安定や意欲にかかわる、脳内の神経伝達物質の分泌バランスが乱れることにより、疲労感を感じやすくなり気力や意欲が低下します。周囲に理解されづらい症状なので、更年期には、神経伝達物質の機能低下に加え、睡眠の質も低下することが多く、そのため疲労感を感じやすくなり、気力や意欲が低下します。
周囲に理解されづらい症状なので、休みづらいと無理をしてしまったり、頑張れない自分を責めてしまう女性が多くいるのが現状です。

その他にも、吐き気、肩こり、下痢、便秘、ドライアイ、のどの渇き、頻尿など、多岐にわたる症状が複合的に現れ、仕事の妨げになることがあります。

更年期ロスの対処法

適切な対策を講じることで、更年期症状を緩和することができます。更年期症状とうまくつきあいながら、心身の健康を保って働くために、まずはできることからはじめてみましょう。

1. 職場に相談できる相手を見つける

職場で信頼できる相談相手を見つけることは非常に重要です。上司や同僚に更年期症状について話し、理解を得ることで、職場を働きやすい環境にすることができます。

例えば、体調不良で会社を休んだり、遅刻や早退をした際のサポートをあらかじめ相談しておくのもよいでしょう。

また、職場内で同じように更年期の悩みを持っている人や、かつて悩んでいた経験のある仲間を見つけるのも有効です。つらさを分かち合える人に悩みを打ち明けたり、体験談をきくことで、自分を客観的にみることができ、心が軽くなるでしょう。

2. 適度な運動をする

適度な運動は、ストレスを軽減し、ホルモンバランスを整える効果があります。
ウォーキングやヨガ、軽いストレッチなど、自分に合った運動を取り入れることで、心身の健康を保つことができます。特に、朝のウォーキングは一日の始まりに体を目覚めさせて、心をリフレッシュさせ、エネルギーを高める効果があります。
また、職場でこまめに短いストレッチタイムを設けることで、リフレッシュしやすくなります。

3. 十分な睡眠をとる

良質な睡眠は、更年期症状の軽減に非常に重要です。規則正しい生活リズムを保ち、リラックスできる環境を整えることで、深い眠りを得ることができます。
就寝前には、スマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスする時間を持つことが大切です。
例えば、就寝前に温かいハーブティーを飲んだり軽い読書をすることで、リラックス効果を高めることができます。

4. 職場のカウンセラーの利用や、医師や薬剤師などの専門家に相談する

職場にカウンセラーがいる場合は、積極的に利用しましょう。
また、医師や薬剤師などの専門家に相談することで、適切な治療やアドバイスを受けることができます。ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬など、症状に合った治療法を見つけることができます。

5. 仕事中に暖かいものを飲んでリラックス時間を設ける

仕事中に暖かい飲み物を飲むことで、リラックスする時間を設けることができます。ハーブティーなど、リラックス効果のある飲み物を取り入れることで、心身の緊張をほぐすことができます。特に、午後の休憩時間に暖かい飲み物を楽しむことで、午後の仕事に向けてリフレッシュすることができます。

6.無理をしない

この世代の女性はとかく無理をしがちです。無理にでも「無理をしない」ことを心がけてください。更年期に対応する職場の制度はまだまだ整っていませんが、現状ある制度、有給休暇やフレックス勤務、リモートワークなどの制度を活用し、不調を感じたらしっかりと休み、心と身体の回復に努めるようにしましょう。

更年期は、働き方をアップデートするタイミング

更年期ロスは、多くの働く女性が経験する道です。一人で抱え込んで自分を責めたり、自信をなくす必要はありません。

更年期はライフステージの一段階で、永遠に続くものではありません。

この時期を、働き方を見直しアップデートする絶好のタイミングと捉え、自分自身を労わりながら更年期を乗り越えていきましょう。

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