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「メノポーズ」という言葉をご存知でしょうか?
直訳すると「月が止まる」という意味で、「閉経」や「更年期」のことを表します。
タイトルにもある通り、国際閉経学会において毎年10月18日は「世界メノポーズデー(World Menopause Day)」となっており、更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日として定められました。
さらに、国内では、日本女性医学学会が10月18日〜24日までの1週間を「メノポーズ週間」として、様々な啓蒙活動が行われています。
更年期というとネガティブなイメージや、先入観による誤解などから正しく知られていないことも多くあります。更年期は人生の一つの節目として、多くの変化が生じる時期です。この変化を理解し、適切に対処するために、正しく理解しておくことが不可欠になります。
新たな知識を身につけておくことで、自身はもちろん、ご家族や周囲の方の更年期をより穏やかに過ごすヒントが見つかるはずです。
「世界メノポーズデー」を機会に、更年期について正しく理解し、自分の心と身体に向き合ってみましょう。
更年期症状は人それぞれ。今の自分の状態を把握しておくことも大切です。
漢方理論と世界の伝統療法を融合させて定義した、独自の「虚-実、寒-熱、湿-燥」の3軸・6要素の組み合わせで個々の状態をバランスタイプ(8分類)に判定します。
更年期の主な症状
更年期には軽いものも含めると約8割の女性が何かしらの症状を自覚していると言われています。ホットフラッシュと言われる、ほてりやのぼせなどが代表的ですが、それ以外の症状を感じる方も多くいます。
つらい症状はあるけど、病院に行くほどではないかも…と、なかなか周りの人にも相談せずに過ごされている方もいるのではないでしょうか。
女性ホルモンは、脳の視床下部によってコントロールされています。視床下部から出された指令は脳下垂体から卵巣へと伝えられ女性ホルモンが分泌されます。更年期になると、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少しホルモンバランスが乱れます。すると、脳の視床下部がエストロゲンを多く分泌させようとさらに指令を出すのですが、卵巣の機能が低下しているため、いくら指示を出してもエストロゲンの分泌量は増えません。
そのような状態を繰り返すうちに、視床下部がパニックを起こしてしまうのです。この視床下部は自律神経をコントロールする働きもあるため、自律神経のバランスが乱れることにより様々な症状が引き起こされるのです。
更年期障害の症状は大きく分けると3種類に分けられます。
1.血管の拡張と放熱に関係する症状
- ほてり
- のぼせ
- ホットフラッシュ
- 発汗 など
2.精神症状
- 気分の落ち込み
- 意欲の低下
- イライラ
- 情緒不安定
- 不眠 など
3.その他さまざまな身体症状
- めまい
- 動悸・胸が締め付けられるような感じ
- 頭痛
- 肩こり
- 腰や背中、関節の痛み
- 冷え
- しびれ
- 疲れやすさ など
更年期症状を引き起こす要因
更年期を迎える40代後半は、仕事上の責任、子どもの思春期や受験、夫婦関係、嫁姑問題、介護問題など、ストレスの原因が多くなる時期です。
更年期にさまざまな症状が現れる最大の原因は、前述の通り女性ホルモンの分泌の低下ですが、それに加えてその人の性格や環境ストレスも影響します。
ホルモン・加齢(生物学的要因)
【閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の低下】
卵巣機能が低下することで、脳からの指令を受けてもエストロゲンの分泌量が増えず、自律神経のバランスも崩れます。
家庭や仕事(社会的・環境的要因)
【パートナーや子どもとの関係、親の介護、転職・職場のストレスなど】
更年期世代は仕事上での立場や家庭環境の変化が多く、ストレスにさらされやすい時期といえます。とくに、仕事や介護、子育てなどいくつもの役割が重なると、大きなストレスを感じてしまうことが少なくありません。環境的ストレスが大きいと、症状が重くなるといわれており、症状の悪化を招く場合もあります。
本人の性格や気質(心理的・性格的要因)
【真面目・神経質・完璧主義といった性格的な要素など】
育った環境や性格による心理的な要因も関わっている場合があります。
また、これ以外にも、栄養の偏りや睡眠不足なども更年期障害の症状に影響します。
女性のヘルスリテラシーを向上させる
今これを読んでいる方は、更年期の自分の健康が気になり、情報を求めようとされているのだと思います。自分の症状は何なのだろうか、そのための療法はどんなものがあるのだろうか。それを知ろうと、周囲の人に聞いたり、本やインターネットで調べたりするかと思います。
ただ、どれが自分にあった正しい情報なのか、見つけ出すことは難しい問題です。やみくもに探しても、情報はあり余る程探せてしまうため、その探し方も考えなければなりません。さらに、その結果を理解し、評価して適切に使うことは簡単ではありません。
既に何かの治療などで通院している場合は、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者から情報を得ることができます。しかし、通院している症状以外の疑問や不安に対してまで常に的確に応えてもらえるかというと、診療の場でコミュニケーションが十分にとれないなど、難しい場合も多いかもしれません。
対人的なコミュニケーションでも、本やインターネット検索の場合でも、健康や疾病について、情報の入手から活用までの一連の行動を適切に行うにはある程度の技量が必要です。
そのような技量、能力を「ヘルスリテラシー」と呼んでいます。WHO(世界保健機構)では、ヘルスリテラシーは、「健康情報にアクセスし、理解し、使える能力」と定義されています。
ヘルスリテラシーが低いと
- 病気、治療、薬の誤った情報に振り回される
- 病気の小さな自覚症状を見逃してしまう
- 病気を予防する健診やワクチンに関心を持てない
- 医師や看護師に症状や心配をうまく伝えられない
- 慢性の病気を悪化させやすい
など、ヘルスリテラシーが低いと誤った健康情報に振り回されるだけでなく、健康に関する関心が低くなり、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者に適切に相談ができず、健康を悪化させやすいことがわかっています。
また、更年期女性のヘルスケアが進みにくい背景には、「ヘルスリテラシー」が向上しにくい環境があり、それらを改善することが大切だと考えられます。
ヘルスリテラシーを高めるために
1.健康を知る力を高める
まずは体重や血圧など簡単に測定できる指標を利用して、体の変化を自分から知るようにしましょう。また1年に1回は必ず健診を受診してご自身の体の状態を確認し、ふだんの生活を見直す機会にしましょう。
- 健診などで自分の状態を知る
- 日頃から血圧や体重を測定して変化を確認する
- 違和感や「いつもと違う」を大切に
2.情報を見極める力を高める
インターネットや書籍などで自分から情報を探してみましょう。ただし、根拠があいまいな情報に振り回されないために、情報を見極める力を養う必要があるので、以下のポイントをチェックするようにしましょう。
- いつの情報か
- 何のために誰が書いたか
- 元の情報(根拠)は何か
- 違う情報と比較したか
3.相談力を高める
自分が望む適切な医療等を利用するためにも、医師、看護師、薬剤師など医療従事者に上手に相談できるようになることは大切です。自分の体の責任者として、体調や困っていることを正確に伝え、わからないことを質問できる能力を身につけておくようにしましょう。
- 伝えたいことや受けた説明はメモにしておく
- 説明を聞き、わからないことは納得するまで質問する
- 相手と人間関係を作る努力をする
- 相談しやすい、かかりつけ医をつくる
もしかして更年期かも?と感じたら
1.知る・理解する・気づく
まずはここまでの内容を含め、更年期の症状に関して知ることが大切です。自分の心と身体が発するサインを見つめてみましょう。更年期症状は非常に多様で、個人差が大きいものです。
- 月経が不順、すでに閉経している
- のぼせ・ほてり・発汗がある
- 明らかな病気がない
などがある場合、更年期症状を疑う必要があるかもしれません。
なお、更年期症状の中でも症状が重く、日常生活に支障をきたしている状態は更年期障害の疑いがありますので、我慢するのではなく、専門の医療機関で適切なケアを受けることが推奨されます。
2.セルフケア
更年期にはセルフケアも大切です。日々の生活を見直し適度な運動、食事・栄養、質の良い睡眠、リラクゼーションなどできることから始めましょう。早めにセルフケアの習慣を身に着けることは健康寿命を延ばすことにも役立ちます。
運動
自律神経を整えて血行を促したりストレスを減らしたりする効果があるため、日常的に適度な運動を行うことで症状の緩和に役立ちます。ウォーキングやヨガ、水泳などの有酸素運動を取り入れるのがポイントです。
運動を行う頻度は1週間に3,4回、1日に30~60分程度が目安です。続けることが重要なため、無理をせず体調や体力に合わせて調整しましょう。
また、満腹時・空腹時・就寝前・入浴後・飲酒後に有酸素運動を行うと、悪い影響を与える可能性があります。運動する時間帯は、食事をしてから2時間後くらいがおすすめです。
食事、栄養
食生活を見直す良い機会です。ホルモンバランスを整え、心身の機能維持に役立つ栄養を積極的に摂取すると、更年期障害を和らげる効果が期待できます。
バランスの良い食事を心がけて、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をまんべんなく摂取することが大切です。
- 大豆イソフラボン(豆腐、納豆、おからなど)
- ビタミンE(ナッツ類、かぼちゃ、なすなど)
- カルシウム(牛乳・乳製品、大豆製品、ひじき・海藻類)
- ビタミンD(魚類、干ししいたけ、卵(卵黄)など)
質の良い睡眠
ベッドに入ってもなかなか寝付けない、早朝目が覚めてなかなか眠れないなど、更年期には睡眠トラブルが多くなりがちです。睡眠の質を上げるために、生活習慣を見直してみましょう。
- 朝起きてすぐ朝日を浴びる
- 入浴は就寝の2時間ほど前に
- 温かい飲み物で眠気を促す
リラクゼーション
自分に合ったリラクゼーションの時間を持つことで、自分のこころとからだをこまめにケアしましょう。
- ぬるま湯(38〜40℃)で入浴する
- 自分にとって心地よい音楽を聴く
- アロマなど香りを楽しむ
3.療法
症状がひどく治療を要する場合を「更年期障害」と言います。
日常生活に支障が出るほどの症状で困っている場合は、我慢しないで早めに医師に相談し、治療を始めましょう。その場合でも平行して生活習慣の改善がとても大切です。
症状に向き合い更年期を上手に過ごそう
女性の平均寿命が87歳までに延びた現在、更年期から後の人生が昔に比べ長くなっていて、更年期は人生のターニングポイントともいえます。
ここでもう一度自分の日々の生活に向き合い、今までの生活習慣を見直すことがこの時期に必要なことです。
更年期をネガティブに捉えず、毎日を楽しんで過ごすことが更年期障害の予防にもなるのではないでしょうか。