朝晩の涼しい風に秋の到来を感じる今日この頃。ここ数年、夏の暑さが長引き、秋の過ごしやすさに身を委ねられる時間も束の間。あっという間に冬になってしまう印象があり、暑さ対策から寒さ対策への迅速な切り替えが必要とされています。更年期は体温調節トラブルが起きやすく、今までよりも冷えの悩みは複雑に。本格的な寒さがやってくる前に、更年期特有の冷え悩みに合わせた対策方法を知っておきましょう。

女性が冷えやすい、その理由は

 冷えは多くの女性が抱える体の不調の代表格。自覚症状のない人まで含めると、8割以上の女性に冷えの症状があると言われています。男性と比べて、女性に出やすい体の冷え。なぜ女性の方が冷えに悩まされやすいのでしょうか。

熱を作るのが苦手な体格

 女性に冷えの症状が多い理由の一つとして、その体の作りにあります。

 女性は一般的に筋肉量が少なく、脂肪が多い体格をしています。筋肉は熱を生み出す役割を持っているので、筋肉量の少ない女性は熱を作るのが苦手な傾向にあります。

 併せて、脂肪は冷えてしまうと温まりにくい性質を持っているので、脂肪が保冷剤のような役割を担ってしまい、冷えが持続してしまうのです。

生理と冷え

 女性はホルモンの影響で排卵前と排卵後とで基礎体温が変化します。

 生理が始まると女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が減り、基礎体温が下がる「低温期」に移行します。

 この体温低下も、女性が冷えを感じる大きな要因の一つです。

外見へのこだわりも一因に

 「細くなりたい」「きれいに見せたい」という願望も、冷えを生む原因となることも。

 痩せるために食事の量を減らしたり、糖質オフダイエットなどをすると、体に本来必要なエネルギーが不足してしまいます。その結果、熱を作るパワーが弱まり体は冷えた状態に陥ります。

 また、体のラインをきれいに見せるためのきつめなガードルやタイトなお洋服も血流を悪くするため、冷えを悪化させる原因となります。

体の一部だけが冷える

 一言に「冷え」と言っても、体全体に冷えを感じている人は意外にも少数派。体の一部だけが冷えて、他の部分は冷えていないという、体の部位によって平常部分と冷えた部分が混在するパターンが多く、人によって冷えを感じる場所は多種多様であることもわかっています。

 例えば、一般的に多くの女性が悩んでいると言われるのが、太ももから足先にわたる「下肢のみ」の冷えです。もともとの体質だけでなく、デスクワーク、テレビ鑑賞、読書などで同じ姿勢をとり続けると、下半身の血流が滞り下肢の冷えの原因になることも。その結果、上半身は冷えていないけれど、下肢だけが冷えてしまうのです。

 また、手足の先に強い冷えを感じる、いわゆる「末端冷え性」も女性の多くが感じている冷えのひとつ。体の中心は冷えていないのに、手先、足先の冷えだけは常に冷たく、中にはじんじんと痛みを感じるほどの人もいるそうです。

 これ以外にも、腰、背中、半身など冷えを感じる部位は人によって異なり、またこれらの部位が組み合わさって冷える場合もあります。

 冷える部位は人の数だけ存在する、と言っても過言ではないかもしれません。同時に、非常に多くの女性が、体の中で異なる体温の部位がある状態に悩んでいる状況も垣間見ることができます。 

更年期特有の「冷えのぼせ」

 さらに更年期の女性には、体の一部が冷えるだけでなく、「冷え」「熱さ」が同時に発生する特有の症状も存在します。それが「冷えのぼせ」。「上半身だけがカーッと熱くなって汗をかくのに、足先は氷のように冷たい」「顔はのぼせて赤くなるのに、手足は冷え切っている」と言ったように、チグハグな体温が共存するのが「冷えのぼせ」です。

「冷えのぼせ」とは?

「冷えのぼせ」とは、文字通り「冷え」「のぼせ」同時に体に出現する状態を指します。具体的には、顔や首、胸元など上半身に熱さやほてりを感じる一方で、手足や腰、下半身には冷えを感じるという、相反する症状が同時に発生するのが特徴です。
 前述の通り、女性はもともと冷えやすい体質で、特に下半身型の冷え性が多いと言われています。
 この体質に、更年期に見られる代表的な症状であるホットフラッシュ(顔を中心とした上半身ほてりやのぼせ、発汗)が重なることで、上は熱いのに下は冷たいという複雑な冷え症状が生まれるのです。

なぜ?「冷えのぼせ」が起きる原因

 体温がチグハグになってしまう「冷えのぼせ」が起こる背景には、主に以下の2つの原因が複雑に絡み合っています。

①女性ホルモンの急激な減少

 更年期に「冷えのぼせ」が起こる最大の原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の急激な減少です。エストロゲンは、女性の体において生殖機能だけでなく、自律神経の働きを調整する重要な役割を担っています。

 自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類から成り立ち、体温、血圧、心拍、消化などを自動的にコントロールしています。エストロゲンが減少すると、この自律神経のバランスが乱れ、体温の調節機能が低下します。

 通常、体温が上がると血管が拡張して熱を放出し、下がると血管が収縮して熱を閉じ込めます。しかし、自律神経のバランスが不安定になると、体温を上げる必要がないのに血管が拡張したり、逆に体温を保つべき時に収縮しすぎたりといった誤作動を起こすようになります。

 この誤作動が、上半身では副交感神経が優位になり血管が拡張しすぎて熱を放出し、顔のほてりや発汗につながり、下半身では逆に交感神経が緊張して血行が悪くなり、冷えを感じるという、チグハグな症状を引き起こすのです。

②筋肉量の減少と血行不良

 筋肉は熱を生み出す重要な器官。女性はもともと筋肉量が少ない上に、更年期の女性はさらに加齢による減少もあるため、熱源が足りず体は冷えやすくなります。

 体が冷えると、人間の身体は本能的に脳だけは温度が低下しないように頭部に血液を送ることを優先します。その結果、顔を中心とした上半身に血流が集中して、顔のほてりや発汗が生じます。

 一方の下半身は、ふくらはぎの筋肉量の減少により冷えがちになります。ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、重力に逆らって血液を心臓に戻すポンプの役割を果たしています。加齢に伴いふくらはぎの筋肉量が減ると、下半身の血液の流れが滞り、下半身は冷えやすくなります。

 その結果、上半身は暑く、下半身は冷える複雑な冷えが現れるのです。

多角的なアプローチで対策を

 体に「暑い」と「冷え」が共存する「冷えのぼせ」は、原因が複雑なだけに、やみくもに体を温めるだけでは解決しないのが悩ましいところ。「冷えのぼせ」を改善するためには、多角的なアプローチで対策を講じることが重要です。ここでは、すぐに取り組める具体的な対策を5つ取り上げます。

1:自律神経を整えるライフスタイル

 自律神経の乱れは、更年期特有の「冷えのぼせ」を引き起こす最大の原因です。まずは、自律神経を整えるために主に下の2つを意識して生活習慣を見直してみましょう。

・生活リズムを整えて睡眠の質を高める 

睡眠はたまった心身の疲れを取り、自律神経のバランスを整えてくれる大切な時間です。朝起きてから寝るまでの生活リズムを見直すことで、睡眠の質を上げることができます。朝起きたら太陽の光を浴びる、寝る前は部屋を暗めにする、毎日できるだけ起床時刻や就寝時刻は同じにする、など、お金や時間のかかる下準備は必要ありません。1日の疲れをリセットし、自律神経のバランスが整う毎日のリズムを作りましょう。

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ストレスをためない

没頭できる趣味や心身をリフレッシュしてくれる運動、友人との気兼ねない会話など、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。更年期の女性に特におすすめのストレス解消方法は、幸せホルモンを増やしてくれる「推し活」です。自分に合った方法でストレスを軽減し、積極的に自律神経を整えていきましょう。

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2:体を温める食事と飲み物

温かい食事や飲み物で体の内側から温めることで血流は円滑になり、体の部位による体温の偏りが均等になります。また、内臓を温めることで自律神経の働きも整いやすくなるので一挙両得。ちょっとした心がけが体に変化をもたらしてくれます。

・体を温める食材を積極的に摂る:

毎日の食事も冷えを解消するチャンスです!体を温める食材は、しょうが、ネギ、ニンニク、ニラ、根菜類(ゴボウ、レンコン、ニンジンなど)、カボチャ、などスーパーで手軽に買えるものばかり。難しいことを考えずに、まずは一品、体を温める食材を使ったメニューを取り入れてみましょう。

・冷たい飲み物や食べ物を控える:

上半身が暑いからといって、冷たい飲み物や食品を大量に摂るのは御法度です。普段のドリンクはできるだけ常温か温かい飲み物を選び、食事の時は温かいスープや味噌汁を加えるようにしましょう。

3:部分温活で「冷え」を根本から解消

上半身が暑いため、体を温めることを敬遠しがちですが、「冷えのぼせ」タイプの人にもやはり温活は大切。重要なのは、冷えている下半身をピンポイントで温めることです。

・足湯(部分温浴)

40〜42℃くらいの少し熱めのお湯に、膝下から足先までを15〜20分ほど浸す足湯は、下半身の血行を効果的に促進します。上半身を温めすぎることなく、下半身だけを温めることができるので、「冷えのぼせ」の改善に期待ができます。

 忙しくて足湯する時間が取れない人には、ブーツ型の湯たんぽがおすすめ!ブーツ型なので、リビングや自分の部屋でデスクワークや勉強している間も足を濡らさずに足湯気分が味わえます。

・部分的な厚着

全身にかけて厚着すると顔のほてりが助長される恐れがあるため、おなかや足首、手首など、血液が集中しているスポットだけを温めることで、全身の血行改善を目指しましょう。おなかには腹巻き足首にはレッグウォーマーを装着。スマホやパソコンを操作する時は、指なし手袋が作業の邪魔をせずおすすめです。

4:血行を促進する適度な運動

体が温まらない原因である筋肉量の減少を食い止め、さらに血行を改善するためには、適度な運動も忘れてはなりません。

簡単に取り組めるおすすめの運動はウォーキングです。
毎日20〜30分程度のウォーキングは、足裏が刺激されることで全身の血行が促進。さらには、第2の心臓と言われるふくらはぎの筋肉を強化することもでき、下半身の冷え予防に期待ができます。

他にも、ストレッチやヨガ、サイクリングやスイミングなど、血行の促進や筋肉量アップする運動はいっぱい。更年期は季節に関係なく冷えとのぼせを体感しやすいので、1年を通して行えるスポーツを選ぶことがポイントです。

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5:専門家への相談

これまでに挙げたセルフケアをしてもなかなか改善が見られない場合は、病院や専門家への相談も検討しましょう。

・婦人科

ほてりや冷えの症状が日常生活に支障をきたすほどの場合は、婦人科を受診することをおすすめします。医師の判断で、ホルモン補充療法(HRT)などの治療を検討することもできます。

漢方

東洋医学では、「冷えのぼせ」を「上熱下寒(じょうねつげかん)」と表現し、体全体の気の巡りや血の巡りの乱れが原因で起こる症状ととらえています。専門の漢方医に相談し、体質に合った漢方薬を処方してもらうことで、抜本的な体質改善を目指すことができます。

冷えの正体を知って、体の内からトータルケア

 冷えに悩む女性は多い一方で、冷えの原因や対策方法は冷えのタイプによって異なります。上半身は暑くて、下半身は冷える「冷えのぼせ」タイプは、更年期に起こる自律神経の乱れが最大の原因。冷えを取るための温めるケアをするだけでなく、バランスの取れた食事適度な運動質の高い睡眠を軸にしたトータルケアで自律神経のバランスを整え、チグハグな冷えにアプローチしていきましょう。

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