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「最近仕事で物忘れによるミスが増えた」「新しいことが覚えにくくなった」といったことで悩んでいませんか?
実は、更年期になると、「物忘れ」の症状が出る女性が意外に多いことが分かっています。
しかし、物忘れの自覚があっても、更年期の症状だと気づいていないケースは少なくありません。そのため、自信をなくして悩んでしまう方も多くいます。また、集中力の低下によって、仕事や家事の場面で今までしなかったようなミスが増える方もいるのです。
この記事では、更年期による物忘れの原因や症状、対処法について解説していきます。
また、メノテックライフ独自の「バランス状態チェック」では、同じ「物忘れ」でも、バランスタイプごとに異なる原因を知ることができます。今の自分のバランス状態がどのタイプに当てはまるのかをチェックし、自分に合った対策を見つけましょう。
更年期に物忘れが増えるって本当?
更年期に物忘れが増える、というのは本当です。
更年期の症状として「ホットフラッシュ」「イライラ」などは有名ですが、物忘れが症状のひとつだと知らない方も多く、原因が分からず悩んだり、落ち込んだりする更年期の女性は少なくありません。
更年期に「物忘れ」が増えると聞くと、「老化現象なの?」「認知症などの病気なのでは?」などと不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、更年期の時期に起こる「物忘れ」の原因は、いわゆる、認知症の原因とは異なるのが一般的です。更年期に起こる「物忘れ」は「ど忘れ」や「更年期うつ」でみられる症状と考えられ、気分の落ち込み、集中力の低下などにともなうものです。 まずは、更年期に物忘れが増える原因から詳しく解説します。
更年期に物忘れが増える原因とは?
更年期に物忘れが増える原因について、一緒に見ていきましょう。
更年期の物忘れの一因はエストロゲンの減少
更年期になると、卵巣の働きが衰え女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」の分泌量が減少します。
このようなエストロゲンの変動は、生理や妊娠など女性特有の機能に影響を与えているだけでなく、脳の働きにも影響を与えています。
たとえば、エストロゲンの分泌量が減少すると、脳を活性化したり血流を促したりする働きを持つ神経伝達物質(アセチルコリン)や幸福感や睡眠の促進、記憶や学習機能にもかかわる脳内の神経伝達物質(セロトニン)の分泌量が減少して脳の処理速度が低下するため、物忘れをしやすくなるのではないかと考えられているのです。
自律神経の乱れによるイライラや憂うつで更年期症状が悪化することも
エストロゲン減少は自律神経やホルモンバランスに影響を及ぼし、記憶の働きにも悪影響を与えます。
自律神経が不安定な状態が続くことで物事に集中できなくなり、更年期の物忘れの症状が悪化してしまうことがあります。
自律神経とは血圧、心拍、呼吸、体温、消化、代謝、排尿・排便など、生きていく上で必要不可欠でも自分の意思では制御できない部分を調整する役割を果たしています。
自律神経の中枢は視床下部です。 それを囲むように位置しているのが大脳辺縁系で、更にその外側が大脳皮質です。
内側の大脳辺縁系は、感情、認知、記憶形成などに関与しています。 この大脳辺縁系と自律神経の中枢である視床下部が情報をやりとりしているため、自律神経が乱れると感情に影響を及ぼし、怒りっぽくイライラしたり、ささいなことが気になり憂うつになったりと、ココロにも不調をきたします。
外部要因も影響する
エストロゲン減少による影響以外にも、外的要因が影響することもあります。
仕事の責任や業務量の増加、パートナーとの関係、子どもの進学や親の介護など、悩みやストレスが脳にも影響して一時的に認知機能や記憶機能が低下することがあるのです。
忙しく無理しすぎてしまうことで更年期の諸症状が悪化しやすくなると考えられているため、過剰なストレスを溜めすぎないよう意識して過ごしてみましょう。
更年期の物忘れは一時的?回復する?
更年期に起こる物忘れは、変動していたエストロゲン値が安定することで落ち着くといわれています(※)。
ただし、まれに認知症といった病気の可能性があるため、物忘れの程度がひどい場合には、早い段階での受診をおすすめします。
明確に区別することは難しいですが、更年期に起こる物忘れと認知症などの病気で起こる物忘れの代表的な違いは以下の通りです。
更年期に起こる物忘れ | 認知症などの病気による物忘れ |
一部を忘れる(出来事や名前など) ・映画を見に行ったが俳優の名前が 出てこない ・夕飯を食べたが食べたメニューを忘れる ・物忘れしている自分に気がつく | すべてを忘れる(出来事や存在) ・映画に行ったことを忘れる ・夕飯を食べたことを忘れる ・物忘れしている自分に気がつかない |
更年期に起こる「物忘れ」はどんな感じ?
先ほど認知症などの病気による物忘れとの違いについて表の中で簡単に説明しましたが、ここでは更年期に起こる物忘れに多い症状を具体的に解説します。どれかひとつではなく、複合的に起こることもあります。どんな症状があるのか、見ていきましょう。
集中力の低下や不眠を伴う
更年期の自律神経の乱れで、仕事に集中できないといったことが多く起こります。
ミーティングで話が頭に入らず記憶できない、依頼された業務が記憶に残らないなど、仕事のミスが増えることがあるかもしれません。
更年期には不眠の症状も増えるため、睡眠の質が落ちることで脳が休まらず、より集中力も低下しやすくなります。
睡眠の質を上げることで認知や記憶の機能が上がるケースもあります。睡眠の質を高めるような生活習慣を取り入れたり、どうしても眠れないといった不眠の悩みがある場合は、病院を受診することについても検討しましょう。
予定や依頼・人の名前を忘れてしまう
更年期の物忘れの症状のひとつとして、予定や依頼内容、人の名前を忘れてしまうといったことがよく起こります。
エストロゲンの減少によって、一時的に脳の認知や記憶に関する機能が低下することによるものです。
更年期で物忘れや集中力低下の自覚がある場合は、メモを取る習慣をつけてみましょう。自分好みのメモ帳を取り入れると気持ちも前向きになり、大きなミスやトラブルを減らすことにもつながるかもしれません。
また、自分だけで抱え込まず周りの人に協力してもらうなど、無理をしないことも大切です。
新しいことへの興味・関心の低下・覚えにくい(覚えられない)
脳の記憶に関する機能の低下だけでなく、自律神経の乱れで憂うつな状態が続くと、「新しいことへの興味・関心の低下」「新しいことが覚えられない」といったことが起こりやすくなると分かっています。
気分の落ち込みや憂うつな状態が強い場合も、婦人科やかかりつけ医に相談することをおすすめします。気持ちのバランスを整える漢方薬や自律神経を安定させる薬など、自分の状況にあった薬を処方してもらえるでしょう。
ほかの病気の可能性も知っておく
「物忘れ」は更年期に起こるつらい症状のひとつですが、ほかの病気が隠れている可能性も否定できません。
たとえば、強いストレスがかかった出来事が思い出せない「解離性健忘(かいりせいけんぼう)」、数分前のことが思い出せなかったり、これまでできていたことができなくなったりする「若年性認知症」などが挙げられます。
近年の医学の進歩で、発見や対処が早ければ早いほど重篤化するリスクを避けられる可能性が高まります。「まさか自分が」と目をそらさず、気になる自覚症状があったり、家族や友人からの指摘やアドバイスがあった場合は、早めの受診を心がけましょう。
【タイプ別】更年期の「物忘れ」の特徴と対策
メノテックライフでは、更年期に関する研究や生活者アンケートの結果を多角的に分析し、更年期に乱れやすい症状に注目して独自に定義した「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素のバランス状態を判定する「バランス状態チェック」を考案しました。
3軸のバランス状態を組み合わせた8タイプの中から、今の自分の状態を判定できます。
【判定】あなたの「バランスタイプ」は?
心身のバランスが乱れる原因が分かれば、バランスを整えるための方法を知ることができます。あなたのバランス状態をチェックしてみませんか?
更年期の「物忘れ」に多い「湿」タイプの特徴と対策
まずは、更年期の「物忘れ」に多い「湿」の特徴と対策から見ていきましょう。
湿タイプ
- 水の巡りがよくない
- 水分バランスが過剰
<特徴>
□めまいや頭痛、腰の痛みを感じやすい
□手足や顔などがむくみやすい
□疲れやすい
<湿の対策>
水分の代謝がうまくいかず、体内にある水が停滞して起こるのが「湿」です。
水の巡りが悪くて頭部に水分が溜まるため、脳の自律神経や血液の巡りが悪くなっている可能性があります。
湿を取り除くハトムギ、あずきや昆布のような穀類や海藻類を食事に取り入れましょう。また、ストレスや疲労の回復、高血圧などに効果が期待できるカリンなどもおすすめです。
更年期の「物忘れ」に多い「熱」タイプの特徴と対策
「物忘れ」でも、「熱」タイプの特徴と対策を見ていきましょう。
熱タイプ
- 暑がり
- 冬でも冷たいものが好き
<特徴>
□ ほてり・イライラを感じやすい
□ 暑がり・汗をかきやすい
□ のどがかわきやすい
<熱の対策>
「熱」は、本来なら排出されるべき熱が体内にこもり、ほてりやのぼせを感じやすかったり、夜中に口が乾きやすかったりします。場合によっては、排尿や排便、胃腸症状や睡眠の質にも影響したりします。 また、「熱」と「湿」が合わさることにより、自律神経や血液の巡りを邪魔し、さまざまな不調が起こりやすくなります。
体内の熱を冷ます作用があるトマト・なす・きゅうり・ゴーヤ、熱と体内の余分なものを取り除く作用がある菊花・たんぽぽなどがおすすめ。ジャスミンやペパーミントなどのハーブティーで、リラックスタイムを楽しんでみるのもよいでしょう。
※ハーブティーには妊娠・病中に禁止されている種類や利尿作用が強く就寝前に向かない種類もあります。飲む前に成分表や注意書きを確認しましょう。
更年期の「物忘れ」に取り入れたい栄養・食事
更年期の物忘れや集中力低下といった症状が気になる方は、食事を見直してみるのもおすすめです。ここでは、日々の食生活に取り入れたい栄養素や食事について紹介します。
※サプリメントや食べ物、お茶には妊娠・病中に禁止されている種類やアレルギー症状が出る場合があります。飲む前に成分表や注意書きを確認しましょう。
イチョウの葉
イチョウの葉には、脳やカラダの血管を拡張させ、血流をよくする作用が期待できる「ギンコライド」や「フラボノイド」などの成分が含まれています。
脳の血流が改善されることで、集中力が向上したり、物忘れを軽減させたりする可能性があり、最近では機能性表示食品に使われるなど注目が高まっています。
イチョウ葉は、サプリメントやお茶(ハーブティー)などで市販されているため、手軽に摂取できるのも嬉しいメリットといえるでしょう。
ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼとは、納豆のネバネバした部分に含まれるタンパク質分解酵素です。
血栓の主成分となるタンパク質の分解を助けてくれるため、動脈硬化や脳梗塞を予防する効果が期待される成分。脳への血流も促して物忘れや集中力低下を軽減する可能性が高まります。
また、コレステロール値を下げ、高血圧の予防にもつながるといわれています。更年期には「高血圧」の症状が出る女性も多いため、積極的に摂取したい栄養素といえるでしょう。
DHA
DHAは、体内で合成することができない、不飽和脂肪酸のひとつです。脳内の神経細胞などを活性化して認知機能などを向上させる効果が期待されています。
高血圧や動脈硬化などの予防にも効果があるという報告もあります。
DHAは、さばやいわし、さんまといった青魚や、まぐろの脂身などに多く含まれる成分。魚の缶詰などをうまく活用して、手軽に摂取しましょう。サプリメントでも多く市販されています。
更年期の「物忘れ」|セルフケア・改善を目指すための対処法
更年期による「物忘れ」の症状を、少しでも和らげるためにおすすめの対処法を3つ紹介します。無理のない範囲で、できることからはじめていきましょう。
質のよい睡眠
脳は睡眠中に、記憶を整理したり、定着させたりする働きをしていると考えられているため、質のよい睡眠をしっかりとることで、物忘れの軽減につながります。
質のよい睡眠をとるために、おすすめの方法は以下の点です。無理のない範囲で取り入れてみましょう。
●入浴はぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくりと浸かり、睡眠の90分くらい前までにすませておく
●寝る直前までスマートフォンやパソコンを見ない(特にスマホの長時間利用は、膨大な情報処理のために脳がフル稼働して疲れがたまる原因にもなるので避けるようにする)
●寝る前の食事、カフェインやアルコールをできるだけ摂取しない
ツボ
ツボを刺激することで、脳への血流を促されるなど、更年期の物忘れによい作用をもたらすことが期待できます。気持ちいいと感じる程度を目安に、優しく押し上げるように指圧してみましょう。
●攅竹(さんちく)
顔の眉毛のところにあるツボ。眉頭の少し下にあるくぼみ付近。眠気、集中力の低下を感じた時におすすめです。
●率谷(そっこく)
頭にあるツボ。耳の上、髪の生え際から指 2 本分上付近にあります。ホルモンバランスの安定化にも効果が期待。耳の周り全体をも軽くもみほぐすように刺激することで、頭全体がスッキリさせるような効果も期待できます。
●天柱(てんちゅう)
頭の後ろ、髪の毛の生え際付近、首の太い骨の外側にあるツボです。頭が重く感じるとき、ぼんやりするとき、肩こりで頭に血流が不足している時などにおすすめ。
軽い運動
運動も物忘れの軽減に効果が期待できるでしょう。
適度な運動をすることで、脳を含めたカラダの血流がよくなり脳を活発に働かせます。適度な疲れは睡眠を促すことにもつながるでしょう。
また、楽しみながら行う運動には、ストレスを解消させる効果もあります。そのため、更年期によりイライラや気分の落ち込みなどの症状があるときにも試したい対処法のひとつです。
無理にハードな運動をする必要はなく、まずは週に1回でもよいので、ウォーキングやストレッチ、家で動画を見ながらのヨガなど、手軽なものからはじめてみましょう。
更年期による「物忘れ」は1人で悩まずに相談を
更年期による「物忘れ」や「集中力低下」を、誰にも相談できずに悩んでいる女性は多くいます。
しかし、ちょっとした生活習慣の改善や人と話すこと、身近な食べ物などで、更年期のつらい症状が緩和されるケースがあります。1人で悩みすぎず、家族や友人、信頼できる医師などに相談してみましょう。
症状がひどいときや、ほかの病気が疑われるときは、早めに医療機関を受診することも大切です。周りのアドバイスも上手に受け止めながら、今の自分のバランス状態を知り、できる対策からはじめていきましょう。