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「イライラして眠れない」「寝てもすぐに目が覚めてしまう」といった不眠。
実は、更年期の女性の多くが経験する症状のひとつなのですが、このことを知らずに悩んでいる方が非常に多いのです。
更年期で疲れたカラダとココロに、追い打ちをかける不眠のつらい症状の原因や対処法について解説します。
また、本記事で紹介するメノテックライフ独自の「バランス状態チェック」では、同じ不眠でも、バランスタイプごとに異なる原因を知ることができます。今の自分のバランス状態がどのタイプに当てはまるのかをチェックし、自分に合った対策を見つけましょう。
更年期で不眠?つらさと原因
まずは更年期の不眠で悩む方がどれほどいて、どのような関連性があるのか、また、更年期の不眠にはどのような原因が考えられるのかについて解説します。
更年期で眠い?不眠でつらい人は多い
更年期の症状により「寝つきが悪い」「眠れない」といった悩みを抱える方は、実際にどの程度いるのでしょうか?
2022年に厚生労働省が行った「更年期症状・障害に関する意識調査」の結果では、なんらかの更年期の症状がある対象者のうち、不眠や寝つきの悪さを挙げた方の割合は、50代が最も多く54.8%、40代で49.0%、30代でも45.3%にものぼります。
40代〜50代の更年期世代、30代のプレ更年期世代いずれの場合も、約2人に1人の割合で、なんらかの不眠のつらい症状を訴えていることが分かります。
出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」2022年7月26日
眠りの「質」が下がっているかも
更年期に以下のような症状がある場合、睡眠の質が下がっている可能性があります。
- 寝つきが悪く、入眠まで30分~1時間はかかる
- 眠りが浅く、夜中に何度か目が覚める
- 早朝に目が覚めてしまう
- しっかり寝たつもりだけど日中も眠たい
睡眠の質が下がる原因のひとつに、更年期に女性ホルモンのエストロゲンが減少することが関連していると考えられています。
睡眠には、睡眠ホルモンである「メラトニン」が十分に分泌されることが必要です。メラトニンは体内時計の調節や催眠作用を促す働きなどを持ちます。
メラトニンの原料になるのが幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」。
このセロトニンは女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、間接的に減少してしまうと考えられており、結果として眠りの質の低下につながるといわれているのです。
夜間に起こるのぼせやイライラも原因に
自律神経は体温や血圧、脈拍などをコントロールしている神経ですが、更年期になって女性ホルモンのエストロゲンが減少するとバランスが乱れ、急なのぼせやほてり、イライラなどの症状が発現します。
のぼせやほてり、イライラといった症状は、夜に突発的に起こることも多く、それが原因で寝つきが悪くなるケースが少なくありません。急な熱さや大汗で夜中に目覚めてしまったり、眠れなくなるなどの不眠の原因につながります。
●女性ホルモンの分泌と更年期の自律神経の乱れ・不調の関係●
脳の視床下部が排卵の準備をするように指令し、下垂体から「卵巣を刺激するホルモン(卵胞刺激ホルモン・FSH/黄体形成ホルモン・LH)」が分泌される
↓
卵巣から女性ホルモンが分泌される
●排卵前:排卵準備のための女性ホルモン「エストロゲン」が分泌
●排卵後:妊娠準備のための女性ホルモン「プロゲステロン」が分泌
↓
妊娠に至らなければ生理がくる
30代後半から卵巣機能の衰えで女性ホルモンの分泌量が低下。脳の指令通りに分泌されないことに脳が混乱し、自律神経が乱れる
↓
生理とは関係ないタイミングで、更年期のさまざまな不調が発現する
パソコンやスマホの光も影響
更年期が直接的な原因ではありませんが、夜間寝る前に、パソコンやスマートフォンから出るブルーライトを大量に浴びると、睡眠物質である「メラトニン」の分泌量が抑制され、体内時計が乱れ、眠る力が低下するという指摘があります。
しかし、この時間帯だけが唯一のリラックスタイムである場合は、無理に止めることでストレスになり自律神経がさらに乱れてしまうことも。
例えば、寝る30分前にはスマホを机に置きアロマをたく、電球色の間接照明に切り替えるなど、上手な対処法を探してできる範囲で試しましょう。
【タイプ別】更年期の「不眠・眠い」の特徴と対策
メノテックライフでは、更年期に関する研究や生活者アンケートの結果を多角的に分析し、更年期に乱れやすい症状に注目して独自に定義した「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素のバランス状態を判定する「バランス状態チェック」を考案しました。
3軸のバランス状態を組み合わせた8タイプの中から、今の自分の状態を判定できます。
【判定】あなたの「バランスタイプ」は?
心身のバランスが乱れる原因が分かれば、バランスを整えるための方法を知ることができます。あなたのバランス状態をチェックしてみませんか?
更年期の「不眠・眠い」に多い「湿」タイプの特徴と対策
【湿タイプ】
- 水の巡りがよくない
- 水分バランスが過剰
<特徴>
□めまいや耳鳴りを感じやすい
□雨や台風の時に頭痛を感じやすい
□オイリー肌・ニキビができやすい
□手足や顔などがむくみやすい
湿タイプは体内の水分の巡りが悪く水分バランスが過剰になっている状態のため、むくみや疲れなどが生じやすくなっています。
「不眠」は、「疲労」や「イライラ」を伴うことが多いですが、これは「湿」と「寒または熱」が組みあわさることによって、さまざまな不調が出やすくなっている事が原因です。
「湿と熱」が組み合わさった状態は、スパイシーで脂っぽい食べ物やアルコールなどで形成されやすく、「湿と寒」が組み合わさった状態は、冷たい飲み物や生もので形成されやすいと考えられています。
そのため、どちらの場合も食生活を見直すことが大切です。
水の巡りをよくする方法として、おへそから指4本くらい上にある「丹田(たんでん)」というツボに、貼るタイプのお灸をしてみましょう。カラダの中から温まるなど、リラックス効果も期待できます。
更年期の「不眠・眠い」に多い「虚」タイプの特徴と対策
【虚タイプ】
- 食エネルギー不足
- 気力を維持したい
<特徴>
□常に疲れやすく、気力がでないことが多い
□食欲不振になることが多い
□胃腸が弱い・お腹を壊しやすい
□運動をすると、すぐ息切れしやすい
□爪が薄く、もろい
虚タイプは体内のエネルギーが不足している状態で、疲れやすく体調を崩しやすいタイプです。脳神経系への栄養も低下することにより、不眠だけでなく、多眠、眠りが浅い、多夢、不安感などが生じることがあります。
脳神経への栄養を届けるためバランスのよい食事が大切ですが、消化機能が落ちている場合は、カラダへの負担が大きい辛いものや脂っこいもの、冷たいものを控えるのがポイントです。
感情がたかぶっているときは、深呼吸をしてリラックスすることを意識しましょう。
お風呂上がりなどのリラックスタイムにおすすめなのは、足裏の土踏まずの少し上、足をぎゅっとしたときにくぼむ辺りにある「湧泉(ゆうせん)」というツボ。力が湧くツボとして有名で、指圧だけでなく、貼るタイプのお灸をあてるのもおすすめです。
更年期の「不眠・眠い」に多い「実」タイプの特徴と対策
【実タイプ】
- 食エネルギーが過剰
- 緊張やストレスが多い環境
<特徴>
□イライラしやすい・緊張する場面が多い
□つい食べ過ぎてしまう・おやつや間食をしがち
□お腹が張ったり、便秘になりやすい
□あざができやすい・出血しやすい
実タイプは、緊張やストレスを感じやすく、交感神経が極度に緊張したりたかぶりやすい状態にあります。
間食やファストフードなどを好み、過食気味で栄養過多な状態から不要なエネルギーが体内に滞りやすい傾向です。その結果、自律神経が乱れて睡眠にも影響を及ぼすことになります。
イライラやほてりを感じやすいため、夜間の急なほてりで眠れずイライラしてさらに寝つけないことがあります。
後頭部と首の付け根付近には自律神経に関するツボがあります。寝たままの状態で、両手を後頭部にあて、気持ちいいと思うところをリラックスしながら指圧してみましょう。
更年期の「不眠・眠い」に多い「熱」タイプの特徴と対策
【熱タイプ】
- 暑がり
- 冬でも冷たいものが好き
<特徴>
□暑がり・汗をかきやすい
□のどが渇きやすい・尿量が少なく、色が濃い
□冬でもアイスや冷たい飲み物を好む
□ほてりを感じやすい
熱タイプはほてりや寝汗、赤ら顔、のぼせなど、自律神経の中でも活動的な働きを持つ交感神経が緊張しやすい傾向です。
活動過多を引き起こす「熱」が体内にこもりやすい状態で、それが起因となって不眠になることが多いようです。
夜間にカラダが熱くなってきたら布団から出てもOKです。静かなリビングのソファーで、アロマやハーブティーなどでリラックスタイムを作りましょう。そのまま寝落ちできるように、ひざ掛けなどは忘れずに。
更年期の「不眠・眠い」に多い「寒」タイプの特徴と対策
【寒タイプ】
- 寒がり
- 夏でも温かいものが好き
<特徴>
□腰や手足が冷えやすい・寒がり
□のどがあまり乾かない・頻尿で、色は薄い
□顔色は青白い方だと思う
□こりや痛みを感じやすく、温めると改善される
手足の冷え、目の疲れ、肩こり、腰の痛みなどを感じやすい傾向にあるのが、「寒」のタイプです。
夏場も冷房で冷えるため、夜間寝るときは、首と足首を温めると安眠につながります。お腹も冷えやすいため、腰にも薄手のタオルを巻いて寝ると安心でしょう。
すぐできる|更年期の「不眠」におすすめの対策
これまで更年期の不眠、眠気のタイプ別の特徴、自分の「バランス状態チェック」を紹介しましたが、この後はバランス状態などに関係なく、誰でもすぐに取り組める不眠におすすめの対策を紹介します。パートナーや家族、友人同士で試してみるのもおすすめです。
更年期の不眠におすすめのツボ
不眠に効くツボを紹介します。押し方は、親指の腹などでツボ周辺を円を描くようにさする、または優しく刺激するようなイメージが最適です。
シールで貼るタイプのお灸や繰り返し使える温感商品でツボ周辺を温めるのも効果的。自分で「気持ちいい」と感じるツボや方法を楽しみながら探し試すのがポイントです。
【頭にある不眠のツボ】
- 完骨(かんこつ)
耳の裏側、耳たぶくらいの位置くらいにある出っ張った骨のすぐ下のくぼみ - 安眠(あんみん)
完骨から指1~2本分ほど下へ移動したところにあるくぼみ付近 - 風池(ふうち)
後頭部と首との境目付近。首筋にそって骨が一番出っ張っているところ。髪の生え際付近
アロマやハーブティーでリラックス
アロマ | ハーブティー | |
---|---|---|
不眠におすすめ | ・ラベンダー・ローマンカモミール・ゆず など | ・カモミール・パッションフラワー・ペパーミント など |
更年期におすすめ | ・ローズ・ゼラニウム・ローズマリー・クラリセージ など | ・レモンバーベナ・レモンバーム・ピンクローズ など |
更年期の不眠には、リラックス効果が期待できるアロマやハーブティーを活用するのもおすすめです。アロマはディフューザーがなくても、ハンカチやティッシュなどにアロマをたらして、枕から少し離れた場所に置くだけでも効果があります。
ハーブティーは1日1〜3杯がひとつの目安。自分のお気に入りを探してみましょう。
※ハーブティーには妊娠・病中に禁止されている種類や利尿作用が強く就寝前に向かない種類もあります。飲む前に成分表や注意書きを確認しましょう。
すぐできる|更年期の「不眠」におすすめの入浴法
眠りや寝つきの改善には入浴を上手に行うことも効果的です。ほてりやのぼせを感じやすい方、冷えを感じやすい方、全身入浴が難しいときの部分浴法などを紹介します。
更年期の不眠におすすめの入浴方法
更年期の不眠で悩んでいる場合は、湯船につかる入浴でカラダの「深部体温」を上げると、睡眠時に効率的に深部体温が下がり、寝つきが良くなります。無理のない範囲で試してみましょう。
- 質のよい睡眠をとるため、一般的には就寝の1時間半前を目安に入浴する
- ほてりを感じやすい方は就寝の2時間ほど前を目安に入浴する
- 冷えを感じやすい方は就寝の30分ほど前を目安に入浴する
- 38~40度くらいの少しぬるめのお湯にする
- 途中、半身浴で休息しながら10分~15分くらい全身浴をする
※ほてりや発汗、動悸がある場合は無理は禁物。気持ちいいと感じるまででOK。汗をかいた後は、水分補給も忘れずに。
更年期の不眠におすすめの部分浴方法
ほてりやのぼせが強いとき、動悸を感じるときは無理に入浴をしてはいけません。生理中も長湯をするとのぼせることがあるため、湯船に入れない・入りたくないときにおすすめの入浴方法として、部分浴法を紹介します。
【湯船に入れない・入りたくないときの入浴方法】
- 足先〜ふくらはぎの半分くらいまでを温める足浴(そくよく)がおすすめ
- お湯の温度は40〜41度くらい。
- 大き目のバケツなどにお湯を溜め10分程度~気持ちいいと感じる時間を目安に行う
※ふくらはぎの半分くらいまで温めることで血流がよくなりカラダを温める効果が期待できます。好きな本を読むなどリラックスタイムにするのもおすすめ。
不眠が長引くときは医療機関を受診する
不眠状態が3カ月以上続く、悪化するといった場合は、婦人科、心療内科、メンタルクリニックなどの医療機関を受診しましょう。
「強い薬が出される」「睡眠薬は依存性が高い」などマイナスのイメージが先行しがちですが、眠りに効果がある「漢方薬」、「寝つき」をサポートする「睡眠導入剤」、「依存性が少ない睡眠薬」など不眠治療は進化しています。
怖がらずに、相談だけでもしてみることをおすすめします。
更年期の不眠の対策はできることから始めよう
更年期の不眠はあまり知られていませんが、多くの女性が悩む更年期の症状のひとつですが、質のよい睡眠が得られると、それ以外の不調も改善された実感が高まるというアンケート結果もあります。
更年期の不眠を改善させるには、今の自分のバランス状態を把握し、自分にあった対策を取ることが大切です。
「少しは眠れているから…」などと無理や我慢を重ねると、朝が起きられない、疲れがとれないなど日常生活にも影響を及ぼしてしまいます。自分のできるところから、始めてみませんか。