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女性の中には「汗」に関する悩みを抱いている方が多くいます。
特に、40代後半〜50代前半の更年期のころになると、暑い季節や緊張しているわけでもないのに急に大量の汗が出る発汗の症状に悩まされることがあります。実はこのような女性の発汗は30代後半からはじまる方もいるのです。
そこで女性の発汗の原因、ツボや栄養・食べ物といったすぐにできる対策について詳しく解説します。
女性に起こる発汗・多汗の原因とは?
女性に起こる異常な発汗や多汗には、原因があります。仕事中や人前で汗が止まらなくなったり、夜中に急に発汗したりするなどのメカニズムについて、詳しく見ていきましょう。
女性の発汗は自律神経の乱れが主な原因
女性の異常な発汗・多汗が起こる原因について、まずは女性ホルモン「エストロゲン」と脳との関係から解説します。
女性ホルモン「エストロゲン」と脳の視床下部との関係
女性に起こる異常な発汗や多汗の原因のひとつとして挙げられるのが、女性ホルモン「エストロゲン」が減少することによって起こる「自律神経の乱れ」です。
「エストロゲン」とは、生理や妊娠にかかわるだけでなく、肌のつやや潤い、血管のしなやかさなどを維持する働きを持つ女性ホルモンのひとつ。
そのエストロゲンは、脳にある視床下部からの指令を受けて卵巣で分泌されています。更年期になると卵巣の機能が低下し、視床下部の指令通りにエストロゲンを分泌できなくなります。
指令を出しているにもかかわらず、エストロゲンが十分に分泌されないことで、視床下部がパニックの状態に陥ると、同じ視床下部によってコントロールされている「自律神経」にも乱れが生じてしまうのです。
自律神経の乱れと発汗・多汗との関係
自律神経とは、心拍や血圧、呼吸といった生きることに欠かせない機能の調整を行っている大切な存在。そのコントロール下に「発汗」など汗に関する機能も含まれています。
発汗は、体温の恒常性維持(体温を一定に保とうとすること)という生理的にとても重要な役目を果たしており、体温の上昇に反応して自律神経が汗腺を刺激して発汗することにより体温調整が行われているのです。
自律神経には交感神経(活動的にさせる働き)と副交感神経(リラックスさせる働き)という2つの種類があり、これらは互いにバランスを保ちつつ、私たちの体調を整えています。
2つの自律神経のバランス状態が乱れて交感神経が優位になりすぎると、発汗に異常をきたし、上半身が急にほてり大量の汗をかいてしまったり、ドクドクと動悸がして汗がどっと出てくるような症状が起こるのです。
このような発汗は、実は30代後半くらいの女性にも発症することがあります。これは「プレ更年期」などと呼ばれ、エストロゲンの減少が30代後半から徐々にはじまっていることに起因します。
自分ではコントロールできない自律神経の乱れが原因のため、仕事中や夜間寝ている間など、自分の意思や状況に関係なく、たくさんの汗が出る症状に悩まされることがあります。
●自律神経の種類とバランス機能について●
自律神経には、交感神経と副交感神経という2つの種類があります。交感神経とはアクセルのような存在。活動的な行動や気分を高揚させるような働きを持ちます。
副交感神経はブレーキのような存在です。交感神経で高まりすぎたカラダやココロを鎮めたり、リラックスさせるような働きがあります。
これらは常にバランスを取りながら、カラダとココロを健康な状態に保っているのです。
更年期に入り自律神経に乱れが出てくると、交感神経と副交感神経のバランス状態にも乱れが生じます。
交感神経だけが過剰になったり、副交感神経だけが優位になるなどして、カラダやココロのバランスにも乱れが発現するのです。
ストレスによる自律神経の乱れも異常な汗につながる
過度なストレスがかかることも自律神経の乱れにつながり、大量の発汗を引き起こすことがあります。
日常のさまざまなストレスが強くかかると、自律神経の中でも「交感神経」が過剰になりバランスが乱れます。すると、女性ホルモンの減少で起きたときと同じような異常な発汗が生じることがあるのです。
更年期にあたる40代後半〜50代前半の時期は、なにかとストレスが多い時期。更年期による不調やイライラなども重なり、余計にストレスがたまり発汗が多くなってしまうことがあります。
遺伝的な要素が加味される可能性も
実は多汗症は、遺伝的な要素も関連している可能性が示唆されています。
医学的に明確に解明されているわけではありませんが、海外では多汗症患者の6割程度に家族内に同じような症状の人がいるという報告があがっているのです。
日本の調査でも、重度の多汗症患者においては、家族内でも発症傾向があると指摘されています。
女性の発汗は遺伝的な要因がすべてではありませんが、家族や親戚に多汗症など多汗の傾向を持つ方がいる場合、症状が出やすくなることがあるようです。
参考:Q3原発性局所多汗症の原因は何ですか?公益社団法人日本皮膚科学会
【タイプ別】女性の「発汗」の特徴と対策
メノテックライフでは、更年期に関する研究や生活者アンケートの結果を多角的に分析し、更年期に乱れやすい症状に注目して独自に定義した「虚-実、寒-熱、湿-燥」3軸・6要素のバランス状態を判定する「バランス状態チェック」を考案しました。
3軸のバランス状態を組み合わせた8タイプの中から、今の自分の状態を判定できます。
【判定】あなたの「バランスタイプ」は?
心身のバランスが乱れる原因が分かれば、バランスを整えるための方法を知ることができます。あなたのバランス状態をチェックしてみませんか?
女性の「発汗」に多い「熱」タイプの特徴と対策
まずは、「発汗」や「多汗」といった汗に関する症状の中でも、「熱」タイプの特徴と対策を見ていきましょう。
熱タイプ
- 暑がり
- 冬でも冷たいものが好き
<特徴>
□ ほてり・イライラを感じやすい
□ 暑がり・汗をかきやすい
□ のどがかわきやすい・尿量が少なく、色が濃い
<熱の対策>
熱は本来なら排出されるべき熱が体内にこもり、ほてりやのぼせを感じやすく、さまざまな不調が起こりやすくなります。
おすすめの食材は「ひじき」です。カラダの熱を冷まし、余計な水分の排出を促したり、むくみを解消したりする効果が期待できます。「セロリ」も熱をとり、ストレスの緩和などの作用があります。また、キノコ類の「キクラゲ」も◎。中でも「シロキクラゲ」は交感神経が優位になって起こる発汗やほてりを鎮める効果が期待できます。
また、ハーブティーでリラックスタイムを楽しむのもよいでしょう。特におすすめなのが、セージ。セージには、のぼせ、多汗を抑える効果があるといわれています。
※ハーブティーには妊娠・病中に禁止されているものや利尿作用が強く就寝前に向かないものもあります。飲む前に成分表や注意書きを確認しましょう。
女性の「発汗」に多い「湿」タイプの特徴と対策
次に、女性の「発汗」に多い「湿」の特徴と対策について解説します。
湿タイプ
- 水の巡りがよくない
- 水分バランスが過剰
<特徴>
□めまいや頭痛、腰の痛みを感じやすい
□手足や顔などがむくみやすい
□疲れやすい
<湿の対策>
水分の代謝がうまくいかず、体内にある水が停滞して起こるのが「湿」です。水の巡りが悪いため、余分な水分などをカラダの外へ出す働きがうまくいかず、水分バランスが過剰になり、大量の汗といった症状につながります。特に、熱と水分の停滞の両方があると、多汗になりやすくなります。
水の巡りをよくする食材として、大豆やあずきなどの豆類やきゅうりやスイカなどのうり類がまず挙げられます。また、利尿作用があるビワの葉を使ったビワの葉茶や、デトックス効果や代謝を促すハトムギなどがおすすめです。
女性に起こる「発汗・多汗」ってどんな感じ?
女性に起こる「発汗」や「多汗」は、部位や発汗する量などさまざまです。どのような種類があるのか、一緒に見ていきましょう。
顔や頭など上半身が中心の異常な発汗
顔や頭といった上半身を中心とした場所に異常な発汗をすることがあります。
一般的なケースでは緊張時やストレス時に、顔や脇に汗をかいたりしますが、更年期では、緊張やストレスに関係なく、顔や頭、胸や背中、脇などの上半身だけ急に暑くほてり、大汗をかいてしまう人が多いです。
寝汗がひどい
就寝中に寝汗がひどく、パジャマや布団が濡れて困るという女性も多いです。
寝汗がひどくなると、不快感で何度も起きてしまい質のよい睡眠がとれなくなり不眠の症状に悩まされるケースも……。
中でも、更年期には日中だけでなく夜間に、発汗を伴うほてりやのぼせが出ることも少なくないため、つらい症状のひとつといえるでしょう。
手のひらや足の裏に大量の汗
手のひらや足の裏に集中的に大量の汗をかいてしまうという女性もいます。
手汗がひどいケースでは、持っている紙が湿って字がにじんでしまうようなこともあり、仕事やプライベートでも困るシーンが増えます。
また、足の裏に大量の汗をかく場合は、においや見た目で靴を脱ぐ場面がストレスとなることもあるかもしれません
ベタベタ・におう汗
汗がベタベタすることに悩む女性も多いです。
実は、汗にはサラサラした水に近い汗と、皮脂やたんぱく質、ミネラル分などを多く含むベタベタした汗の2つの種類があると考えられています。
ベタベタした汗には、においの原因物質が多く含まれ蒸発しにくく菌も繁殖しやすいので、におう汗になりやすいのです。
女性の「発汗・多汗」におすすめの対策とは?
異常な発汗や多汗に悩んでいる女性に向けて、おすすめの対策方法を紹介していきます。自分に取り入れやすい方法から試してみましょう。
着替えと汗拭きシートで対策
基本的な対策ですが、事前に汗拭きシートと着替えを用意しておく対策が有効です。
特に、におう汗とは、時間とともに汗がついた部分(皮膚や洋服など)で雑菌が増えにおいを発していると考えられます。
汗をかいたら雑菌が増殖する前に素早く汗拭きシートで汗を拭きましょう。お昼休み、大事なイベントや商談前といったタイミングで、においがしやすいシャツや靴下を取りかえると安心です。
着替えが難しい日は、上着には袖口や脇にゆとりのある通気性のよい服装、靴下は蒸れにくく最近女性にも人気の5本指ソックスがおすすめ。市販の脇汗対策インナーや脇汗パット、脇汗用のスプレーなども上手に活用しましょう。
緊急時には脇・首・足の付け根を冷やす
外出先で汗が出てきて止まらなくなってしまったときには、冷めたいペットボトルなどで首などを冷やしてみましょう。
特に下記の部位にはそれぞれ太い血管が通っています。下記の部分を冷やすことで、一時的にカラダの熱やほてりを下げてくれる効果が期待できます。
- 脇付近:「腋窩動脈(えきかどうみゃく)」が通る、脇の下
- 首付近:「頚動脈(けいどうみゃく)」が通る、頚部(首)
- 両足の付け根やVライン付近:「鼠径動脈(そけいどうみゃく)」が通る、太ももの付け根や股関節付近
気化熱の原理を用いて、汗拭きシートで拭いてうっすら濡れている状態で風をあびるのも、ほてりや発汗を抑えるのに効果的です。
ツボ
ツボだけで完全に汗を止められるわけではありませんが、汗をかきはじめたら「ツボを押して数回ゆっくりと深呼吸」をすると、副交感神経が刺激され汗を落ち着かせる効果が期待できます。出先でもすぐに試せる手の周りのツボを紹介します。
合谷(ごうこく)~労宮(ろうきゅう)~後谿(こうけい)~神門(しんもん)
- 合谷:手の甲の側。親指と人差し指の中間にある少しくぼんだ部分。ストレス緩和、肩こりなど万能のツボといわれる。
↓ - 労宮:手のひらのちょうど中心部。自律神経を整えるとされるツボ。憂うつや疲れなどにも効果が期待。
↓ - 後谿:小指の外側。小指の付け根から、指1本分下(手相でいう感情線の辺り)。緊張を和らげる効果があるとされる。
↓ - 神門:後谿から、手首の付け根にまで下がった位置。指1本分ほど内側(手のひら側・小指の真下)あたり。イライラやストレスを鎮める作用が期待。
その他、「屋翳(おくえい)/バストトップから(鎖骨に向かって)5cm〜10cmセンチくらい上」、「大包(だいほう)/脇の下、ブラジャーのアンダーあたり)もおすすめ。どちらも、その周辺を、下から上にさするように刺激するのが◎。
女性の「発汗」に取り入れたい栄養・食事
異常な発汗や多汗に悩む女性におすすめの栄養素があります。日々の食生活に上手に取り入れましょう。
シロキクラゲ
キクラゲに含まれるビタミンDは、自律神経の働きを整える効果、代謝の高まりや過食を抑える効果があるとされます。
シロキクラゲに含まれるビタミンDの量は、クロキクラゲの7倍という報告があり、シロキクラゲに含まれる「シロキクラゲ多糖体」は、肌や体内に潤いを与える効果が期待されているため、入手できるならシロキクラゲを試してみましょう。
また、シロキクラゲにはカリウムが多く含まれています。カリウムは必須ミネラルの一種ですが、大量に汗をかくと失われやすい栄養素。カリウムが不足すると、疲労感、筋力低下、筋肉のけいれんなどが起こる可能性があるため、意識して摂取したい栄養素です。
玄米・雑穀米
汗のにおいが気になるときには、玄米や雑穀米を摂るのもおすすめです。
玄米に含まれるビタミンEには、汗のにおいを抑制する抗酸化作用があります。また、必須ミネラル、ストレスを緩和してくれるGABA、デトックス効果のある食物繊維も豊富です。
雑穀米には、粟やキビなどのさまざまな種類の穀物が含まれており、玄米同様、ビタミンやミネラルが豊富。
どちらも、白米より硬くたくさん噛む必要があるため、満腹中枢を刺激しダイエット効果も期待できるでしょう。
大豆
大豆に含まれている「イソフラボン」という成分が女性ホルモン「エストロゲン」とよく似た働きをすることがわかっています。
更年期のエストロゲンの減少による異常な発汗や多汗の症状が現れている場合は、特に効果的といえるでしょう。
あずき
あずきには、汗で失われる「カリウム」が含まれており、ほかにも「ポリフェノール」「ビタミンB群」「食物繊維」など栄養が豊富。疲労の回復やむくみの解消などにも効果が期待できます。
いつものスナック菓子を、あずきの入った和菓子に変えてみるのもおすすめ。ただし、糖分の摂りすぎには注意しましょう。
異常な発汗や多汗は1人で悩まないで!
異常な発汗や多汗は、更年期に起こるカラダの変化や、ストレスなど、さまざまなことが原因となって、自律神経が乱れることなどで起こると考えられています。
汗は自分でタイミングや量をコントロールできない分、つらいと感じるときもありますが、今の自分の状態を見つめ知ることからはじめれば、今の自分でできる対策が見つかるはずです。
ツボや食べ物といった対策を楽しみながら、ときには周囲の人や専門家の力を借りながら、1人で悩まないのもポイント。
また、漢方を扱う内科や婦人科などに相談し自分に合った漢方薬を探すのもおすすめです。今の自分が無理なくできる対策からはじめてみましょう。